「ねえ、アスラン、なんで僕にひどいことするの?」
ぐるぐるとキラの言葉が頭を巡る。世界がぐらりと歪んで、キラが俺のことを押し倒すように馬乗りになってそう言った。言葉とは裏腹にキラは笑っていて、やっぱり笑顔はどこまでも可愛かった。
「好きだっていってくれたのに、アスランは浮気ばっかりするし、僕もうやだよ」
浮気なんてした覚えがない。でもキラにはきっとしたように見えてたんだろう、キラは弱いから、すぐに泣いてしまうくらいに。思い込みが激しいから。自分の考えを、間違ったものとして認めない。たぶん俺が何か言ったところで、それに頷くほど聞き分けもよくないだろう。
「キラ」
「……なに?」
曇るように不機嫌な声、こんなに怒ってるキラを見るのは久々で、なんだか少し面白いような気もした。
でもそれじゃ駄目だから、キラの頬に手を置いて起き上がるように囁いた。
「殺すのか?俺のこと」
そう言えば、キラは黙るように視線を逸らして俺から退いた。俺の部屋だと言うのに、我が物顔でベッドに三角座りをして呟く。
「殺して僕だけのものにできるなら、よっぽど楽」
「て、ことは」
「殺せないよ、好きだから」
アスランには笑ってほしいの、きれいだから。キラは子供の譫言のようにそう繰り返した。好きだから殺せない、なんてことを言うんだと宛ら呆れる。まあ最初からそんなことは思ってもいなかったから、当然と言えば当然だ。でもキラに殺されるのは、少しばかり魅力的だとは思う。
「………キラは俺に、キラだけを見てほしい?」
素直にこくりと頷き、下を俯いたままキラは黙っていた。本当に、何でこんなに可愛いんだろうと思ってしまう。こんな子供っぽいところも、変なところで積極的になってしまうところも、すべてが愛しく思えた。
「キラ」
短く名前を呼ぶと、キラがゆっくりと顔をあげる。そのままベッドに倒すように手を取ると、幸せそうにキラが微笑んでいた。ああもう、なんでそんなに至らないのかな。
_サンホラでArkなうでした。エリュシオンが好きです。