好きじゃなかったんなら何で付き合ったんだ。彼はそう声を張り上げると、ぼくのことを突き飛ばしていた。雨がざわざわと音をたてていて、通行人も所構わず騒ぎ立てる彼とぼくを物珍しそうにじっと見ていた。
「好きだったのに」
「…………そう」
わかってる、わかってるのに、裏切った。ぼくが最低な人間だってこともわかってる。この気持ちの行く末だってわかってる。全部、全部。
「だけどね」
「………?」
「先に裏切るのはぼくしゃない、君なんだ」
それだけ言うと、ぼくは彼に折り畳み傘を投げて歩き出した。おれは、なんて言葉が途切れ途切れに聞こえたけど、ぼくにはもう関係ない。彼はすぐに、諦めるから。
(未来が見える少年の話)