「それじゃあ…忍足君ありがとね。」
「ええよ、ほなまたな、苗字さん。がんばりぃな」
「うん!」
「……はぁ」
「あー!!!!ゆっ侑士!!今のって苗字だよな!?」
昼休み、隣のクラスの苗字さんと廊下で話終えて苗字さんが去ったあと俺は一息ついとった。
すると俺のダブルスパートナーである岳人が大声で叫びながら近づいてきた。
「なんや岳人、うるさいっちゅーねん…」
顔を歪めて言えば笑顔で謝ってくる。
「…じゃなくて!!なんで侑士と苗字が話してたんだよ!?」
「なんでっていうてもなぁ…」
――――数分前
「岳人の好きなタイプ?」
「うっ、うん」
俺の目の前にいる少女、基苗字名前は去年たまたま同じクラスで仲良くなった人や。
岳人より少し小さいぐらいの小柄な彼女は小動物を思い出させる。
なんや、妹をもつ兄の気分や。
それで俺を通じてダブルスパートナーだった岳人とも仲良くなったんや。
知り合って1年。
3人で勉強会をしたり遊びに行ったりもしていた。
そしてわかったことがあった。
それは岳人と苗字さんは両思いだってことや。
俺か?俺は世話のやける弟とおとなしい妹を世話する兄ちゃん的存在やな。
え?聞いとらん?堪忍な。
じゃなくて、二人を見てるとめっちゃ分かりやすいのに二人は気づかないくらい恋愛に鈍感なんや。
お互いに顔赤くして話てるんや、なんで気づかんのやろ…
「あの…忍足君??」
そんなことを考えとったら苗字んにまた話しかけられた。
「あぁ、堪忍、岳人の好きなタイプなぁ…」
まさか苗字さん言うわけにもいかんからなぁ…
よし、ここは氷帝の天才、忍足侑士が一肌脱いだろかな。
「岳人はな、純粋な子がいいんやないか?」
「純粋?」
「つまりなぁ…苗字さんはなにも飾らずにありのままの自分をだせばいいや。まぁ俺は岳人やないから詳しくはわからへんな。」
苗字さんは今のままが一番やからな。
岳人も今のままの苗字さんに惚れとるんやから。
「ありのまま…かぁ。そっか!」
花開いたようにふわりと笑う苗字さん。
やばい、今のは破壊力半端ないなぁ…
岳人が惚れるんも分かるわ。
「それじゃあ…忍足君ありがとね。」
「ええよ、ほなまたな、苗字さん。がんばりぃな」
少し照れながら苗字さんは教室に戻っていった。
――――――――
そして今に至る。
「なぁ、なに話してたんだよ!」
さっきからずっと騒いでる岳人。
なにっていわれてもなぁ…
言えるわけないやろ。
「はぁ…」
思わずため息をついた。
「クソクソ!溜め息つくなよ!!」
「そんな気になるなら苗字さんに聞いてこればええやんか…」
「なっ!でっできるわけないだろ!」
明らかに動揺した岳人。
ヘタレやなぁ…
そういや岳人と苗字さんが二人で話してるとこあんまみたことないなぁ…
二人とも焦って会話になっとらんかったな…
ふと大阪にいるヘタレの従兄弟を思い出した。
「あ、苗字さん」
ビクッ
ふいに呟くと岳人が面白いぐらいに反応する。
でもほんまにおるんやもん…
「どうしたんや苗字さん?」
話しかければ苗字さんは下をむいて顔を真っ赤にする。
あぁなるほど…
俺は隣にいる岳人に小声で、
「がんばりぃや岳人、苗字さん泣かせたら許さへんからな。」
真っ赤になり動揺する岳人の隣を離れ次は苗字さんの方へ歩き
「自分を信じてみぃな」
と小声で一言。
苗字さんは決意したような顔にみえた。
そして二人に向かって
「報告よろしくな、お二人さん」
といいその場を後にする。
後はあいつらしだいやな。
無意識ににやつく顔を抑えながら跡部たちがいると思われる屋上へ向かった。
恋のキューピット
(忍足侑士ここにあり、なんてな)
(おっCーキモいCー)
(その後、あの二人が付き合ったのは言うまでもない)
―――――――
初小説だったりします。
20110928 愛流