君のためなら。
僕は、なんだってするよ。
破戒
「もう、いいの。お願い、やめて」
君の声が、聞こえたんだ。
「どうして、どうしてこんな――」
君の声が、聞こえたんだ。
僕はね、君のためならなんだってするよ。
少し前まで、僕はただ殺戮を繰り返していた。
だって、それしかなかったから。
僕にできることは、僕のしたいことは。
でも、君の大切な人を手にかけたとき。
君は言ったね。
「もう、やめて。そんなことをしても、貴方のためにならない。お願いだから、もう人を殺めずに生きて」
だから。
僕は決めたんだ。
――もう人を殺さない。
それを、君が望むから。
君の望みを叶えてあげたいと思ったんだ。
そして、もう一つ、決めたんだ。
「じゃあ…君が理由になってくれる?」
「理、由?」
「そう。僕が生きる理由。今までのそれは、殺戮だった。でも君がそれをやめろというなら、僕はやめるよ。だから、君が僕の生きる理由になって?」
「…いいわ。わかった。そうしたら、もう人を殺めないでくれるのよね?」
『人を殺さない』
これは、戒め。
『君のために生きる』
これは、約束。
どちらを選ぶべきかな?
人を殺さないと、君が殺されてしまうとき。
僕はどちらを選ぶべきかな?
僕は戒めを破った。
久しぶりの感覚。
とても心地よかった。
とても、とても。
「どう、して? 殺さないって言ったじゃない!」
「でも殺さないと君が殺されてた」
「それでもっ! それでも、貴方は人を殺めてはいけないのよ…っ!」
「だって君は、僕の生きる理由なんだよ?」
それは、罪。
――――――
大分前に書いたものです。
改行とか空白とか、そのくらいしか修正していない、と思う。
相変わらず小説ではなく独白。
書けないんです、短編。
そしていつも通り名無し。
つけられないんです、名前。
ハッピーエンドが書けないのも通常仕様です。
……全く成長してないな、自分。
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