四月某日、アメリカ合衆国某所オフィス内のエレベーター内にて。俺、クリス・レッドフィールドは大いに焦っていた。特に意味はないと分かっているのに目的階である十二階のボタンを連打してしまう、せずにはいられない。
「急げ…!」
エレベーターから転がるように出て職場の部署のドアを開ける。
「Good morning.」
よかった、ギリギリで出勤時間には間に合ったようだ。まったく、目覚まし時計が大破しているとは…誰の仕業なんだいったい。
「ブラボー…」
「!」
背後からけだるげな、けれども絶対零度の声が聞こえて思わず身体を跳ねさせる。振り返ると上司であるエクセラ・ギオネが立っていた。
「三日連続でギリギリ出勤とは…いいご身分ねえ?クリス。」
「すまない…反省しているからプルアップは止めてくれ、千切れる、耳が千切れてしまう!」
フン、と鼻を鳴らしたあと解放されて自分のデスクに向かう。隣のデスクの相棒であるジル・バレンタインに冷ややかな目で見られてしまった。少し泣きたい気持ちでデスクの上のノートパソコンを起動させる。
しばらくするとドアの向こうからカツン、カツン、と足音が聞こえてきた。この歩き方は隊長であるアルバート・ウェスカーしか居ないだろう。
ガチャリとドアが開いて彼が入ってくる。
「おはよう諸君。」
俺含めた隊員全員が椅子から立ち上がって敬礼をする。ウェスカーはそれを一瞥して自分のデスクに向かう。彼の秘書であるエクセラが連絡事項を口頭で述べた。
彼女がひとしきり連絡を終えたあと、ウェスカーが言った。
「本日より、我が隊に配属されることになった者を二人紹介する。」
一瞬、オフィスがざわめいた。