Chris | ナノ


 夏の暑さはまだまだ健在だが吹く風が少しだけさわやかに感じられる九月。俺と花子は二人で昼食を食べに外に出ていた。最近俺と花子は七月のマーセナリーズの後から八月初旬まで潜入捜査を行っていた場所に関するレポートを書いている。結構な量の情報が手に入ったのでなかなか手こずりながらまとめていたのだが、つい先ほどようやくすべてまとめ、情報がウェスカーの手元に渡った。

「終わった祝いにどこかランチでも行くか。俺の奢りだから安心してくれ」
「いえ、そんな」
「……嫌か?」

 押して駄目なら引いてみろ。花子はこれに弱いことが最近になってわかってきた。正直いい大人がまだ未成年の女の子に対して大人気ない、とは思うのだがどうしても彼女と一緒に昼食をとりたかった。

「そんなことありません」
「じゃあ、行くか」

 ちょうどジルもレベッカも昼食(もしくはまだ射撃場)に出てしまっていたのだろう。行こうか、と言うと彼女は少しだけ照れたようにはい、と頷いた。最近感情の機微が読み取れるようになってきた。よくにぶいと言われる俺が成長したのかそれとも彼女が分かりやすいのか。


 花子がよく行くのだというカフェに二人で入り、各々好きな食べ物を注文して食べていた。向かいに座る花子はオムライスを食べている。

「君は結構よく食べるんだな」
「『腹が減っては戦が出来ぬ』ですから」

 なにやら聞きなれない響きだったのでたぶん日本語だろう。なんと言ったんだ? と尋ねると、彼女はハッとした様子。咄嗟に出た返事が日本語になるのは今でもたまにあることだそうだ。An army marches on its stomach.の日本語版だと答えられた。なるほど日本ではああいう風に言うんだな。そんな他愛もない話をしながら昼食を食べ終え、会計をして店を出た。その間花子は申し訳なさそうにしていた。もう少し図太くなってもいいのではないかと思う。

「年上に奢られるのも礼儀だぞ」
「う。……ご馳走様でした。とても楽しかったです」
「ああ、よかったらまた付き合ってくれ」
「! はい!」

 何気に次の約束まで取り付け、満足しながらオフィスへ帰る。午後からはトレーニングするか。そう思って横にいる花子の方を見ると、彼女の背後で銃を持った男が今にも彼女に向かって引き金を引こうとしていた。

「花子!」


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