Chris | ナノ




「ああ…私の可愛いロボットたちが…!」
「しっかりして!ウィリアム!」
「パパ、大丈夫よ!みんなパパが頑張ってたのは知ってるわ!」
「シェリー、アネット…!」

毎年、マーセナリーズでロボットを破壊する度、科学技術班の筆頭であるバーキン博士が気の毒になる。普段はバイオ研究者で本来ならロボットは専門外なのにウェスカー隊長に依頼されて作らざるを得ないのだ。
天才というものはなんでも出来てしまうので高性能な戦闘ロボットを作っては隊員たちの度肝を抜いて、最終的に破壊される、というのを繰り返されている。

毎年毎年1000体以上のロボットを飽きることもなく、むしろ年々パワーアップさせている。


…なにが言いたいかと言うと、この後の自分の出番が少々不安になってきた。
今、『テスト』と称してウェスカー隊長(いつ復活したんだ。)とエクセラが戦っているのだがロボットのクオリティが高すぎる。この2人だから楽々こなしているがなかなかに骨が折れそうだ。

「バーキン博士、見事ですね!」
「当たり前だよミス・チェンバース!なんてったってこの私が心血を注いだんだからね!なのにウェスカーと来たら…ああ腹が立つ!」

彼は髪をグシャグシャとかきむしってからなにやら手元にあった赤いボタンを押した。ピ、と音が鳴って、なにやら大きなものがヘリから落ちてきた。
見ればそれは、斧を持ったあの大きなマジニによく似たロボットだった。思わず苦い顔をすると、シェバも顔をしかめていた。…よく死ななかったもんだな、本当に。

「あの、バーキン博士?」
「ウェスカーも苦しめばいい。」
「あの斧は本物ですか?」
「いや、流石にそれはないけどまあ当たったら暫くは動けないだろうね。安心してくれよ、君たちの時は出さないからね。」

楽しそうに博士は笑う。忘れていた、この人は結構マッドサイエンティストなんだった。



「っ…!くそ、ウィリアム…!」
「アルバート!」
「来るな!後方支援を頼む!」

ウェスカーが奴の斧をすんでのところで躱した。頬を少し掠ったのか血が滲んでいる。

「この化け物!よくもアルバートを!」

迫りくるロボットの大群をビンタで破壊しながら突き進むエクセラ。ロボットはあのマジニそっくりに斧を振り回し始めた。迂闊に近付くとまずい。

2人はなにやらアイコンタクトを交わしてから、二手に分かれた。
ウェスカーがいったん動きを止めたロボットの真正面に立つ。獲物を見つけたロボットは再び斧を振り上げて、

「終わりだ。」

ウェスカーが口の端を釣り上げて笑った瞬間、ロボットの背後に立ったエクセラが背中の装置を破壊して、ターゲットは爆発した。
辺りが歓声に包まれる。同時に終了のベルが鳴った。

「くそ、アレじゃ駄目か…」

バーキン博士がそう呟いたのは聞こえなかったことにしておこう。



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