Chris | ナノ




気を取り直してきちんとした格好で花子のもとへと行くと、メイド姿の彼女はナース姿のレベッカと談笑していた。その手には何故かデッキブラシ。レベッカは巨大な注射器を背負っていた。
レベッカの注射器は人に薬品を投与する目的じゃないよな…?

「花子、」
「あ、クリスさん!」
「…さっきはすまなかった。」
「いえ!あの、わたしがびっくりさせてしまったせいで…」

蹴られたところ、大丈夫ですか?と俺に問いかける彼女の頬は少しだけ赤い。…まあ、さっき35にもなるオッサンの裸(上半身)を見せられてしまったわけだしな…

「花子、レベッカ、そのブラシと注射器はどうしたんだ?」
「これ、メイドとナースのアクセサリーみたいなものなんです。」
「武器としての使用も可能らしいんですけど、恐らく使わないかと…特に私なんて注射器なんかどう使うのって話なので…」
「まあ、確かにそうだな。」

鈍器としては使えそうだが、それ以上にはならなさそうだ。デッキブラシはどう、なんだろうか。使えないこともなさそうだが…

「レベッカ、作戦の最終確認しましょ!」
「あ、はい!花子また後でね、失礼します。」
レベッカは俺に敬礼をしてからジルのもとへ走っていった。バトルスーツに身を包んだジルとナースのレベッカが地図の確認をしている。なんだか面白い光景だ。
向こうでは赤頭巾のシェバと黒いスーツを着てまるでSPのような格好をしたジョッシュが装備品の点検をしていた。

「そう言えば、装備はどうなったんだ?」
「あ、マシンガンSIG556とライフルS70が当たりました。緊急スプレーも2つほど。」
「でかした、くじ運があるな。」
「そう、ですか?」

自分の衣装を見ながら花子は言う。俺からすれば当たりだと言いかけて止める、ただのセクハラだ。

「俺はM92Fとハイドラだ。」
「あ、銃弾に被りがありませんね。」
「ああ、囲まれたら俺を呼んでくれ。ハイドラで一掃できるからな。」
「よろしくお願いします!クリスさんも、回復がいったらいつでも呼んでくださいね。」

飛んで行きますから!と彼女は笑う。頼もしいなと笑い返す。ジルがニヤニヤとこちらを見ているが気にしてたまるものか。
と、そのとき。

「花子…!?どうしたんだその格好は!」
「あ、隊長。」
「ダディだ!」
「どうしたんですか隊長?」

話が噛み合ってないことに果たしてこの二人は気付いているだろうか。花子は気付いているだろうが、隊長は気付いてなさそうだ。花子の撮影に夢中で。
…ウェスカー隊長がどんどんおかしくなっていく気がする。もっと恐ろしい鬼のような人だと思っていたのに。

「衣装クジを作ったのはお前か、ルイス。」
「ええ。」
「でかした。」

ありがとうございます、とルイスは言って、二人は固い握手を交わした。本当にどうなってるんだ隊長は。いくら今日が祭りだからと言っても壊れすぎな気がする。花子も少し引いている。

「花子、クリスにあまり近寄るなよ。奴は何をしでかすか分からんぞ。草食動物のような服を着ているが中身はクリスだからな。」
「なっ!」

何故矛先を俺に向けたんだ。そんなに俺に負けて花子のパートナーになれなかったのが悔しかったのか。別に俺は悪くないじゃないか!

「…何言ってるんですか、いくら隊長でもクリスさんのことそんな風に言うと怒りますよ!ダディなんか嫌い!」

彼女に言われてウェスカーは正気を取り戻したらしい。ずれたサングラスと崩れたオールバックの髪を直した。

「許してあげてね、花子。この猛暑でしょう?隊長も茹だっちゃったらしくて…」
「すまなかったな…」
「もう、アルバートはもやしっ子なんだから!」

エクセラが嬉々としてウェスカーを医務室へ連れて行く。

「…もやしっ子は嘘でしょ…」

ジルの呟きが夏の蒸し暑い風にさらわれていった。



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