Chris | ナノ




彼はかけていたサングラスをリング外のエクセラに渡した。

「罰を決めようか、クリス。」

言いながら奴はストレートを決めようとするので、その腕を避けながらありったけの力を右の拳に乗せて繰り出す。くそ、躱された。

「なん、だ!」
「そうだな、俺が勝ったらマーセナリーズで花子のパートナーの座を頂こうか。」
「は!?」

リングの外で誰かが吹き出した。あの位置は恐らくレオンだろう。笑い事じゃないぞ。マーセは2人組でないと出られない。ジルはレベッカと、レオンはルイスと、俺は花子と組むことになっている。
今日は丁度バリーが休んでいるからもしウェスカーが花子をとってしまうと俺はまず出場すら出来ない。それは困る。

「それは勘弁願いたいんだが!」
「じゃあ俺に勝ってみせろ!俺に勝てないんだったらマーセナリーズには出なくていいじゃないか。」
「なんだと!」

お互いの腕をつかみ合って膠着状態。これを打破するには蹴りを入れるしかないが今いくと逆にウェスカーにやられてしまう。どうしたものか…考えている最中で思考が中断された。ウェスカーのパンチが顔面に入る。

「考え事か?余裕だなクリィィス!」
「っ…!」

もはや思考は意味をなさない。今俺がウェスカーに勝つにはただただ今出せる力を拳に乗せて思いきり奴の顔に叩き込むことだ。

「クリスさん!」

花子の声がする。何故か力が湧いて、いや、何故なんてぼかすのは止めよう。俺が花子のことが好きだからだ。
試合前にレオンに言われた。花子が来てから毎日が楽しそうだと。
初めは妹のような、そんな感覚で過ごしていた。昔クレアに体術を仕込んでやったときのような、そんな感じだった。いつからだろうかそれが好意に変わったのは。
彼女が頑張る姿を見るたびに、可愛らしく俺に笑いかけてくれるのを見るたびに、胸が締め付けられるような感覚に陥ったのは。まさか35歳にもなって、年下の女の子に恋をするだなんて思いもしなかった。
何処かで後ろめたい気持ちもある。レオンに指摘されたときも狼狽した。

「隊長に負けないでください!」

目の前のウェスカーが露骨にショックを受けたような顔をする。ご愁傷様だな。
彼との間合いをグッと詰めると、相手も慌てて構える、がそんなの気にせずに彼の顔面に渾身の一撃を叩き込んだ。
同時に、ウェスカーのパンチが顔面に入って、俺は意識を飛ばしてしまった。



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