クリスさんたちの方を見ると、2人はじりじりと距離を詰めてから、お互いの間合いへ入るか入らないかというところで睨み合っていた。
突然ジョッシュさんが鋭いジャブを放って、それをすんでのところでクリスさんは躱す。
外野からは威勢のいい野次が飛んでいた。
『いけ、ジョッシュやっちまえ!』
『クリス、負けたらどうなるか分かってるな!?』
クリスさんとジョッシュさんは毎年決勝で戦っているらしい。
肩を叩かれたので見れば、レオンさんが悪戯っぽく笑いながらわたしに耳打ちをした。一瞬いいのかなと迷ったけど、リングの上のクリスさんが押され気味になっているのを見たら自然と叫んでいた。
「クリスさん頑張って!」
そう叫んだとき、クリスさんが少しだけ笑った気がした。次の瞬間、クリスさんがジョッシュさんを投げた。みんなが歓声を上げるほど綺麗なフォームで、わたしも思わず見とれてしまった。
「勝者クリス!決勝はクリス対ウェスカー隊長!」
クリスさんとジョッシュさんが握手をして、こちらに帰ってくる。
「クリスさん、お疲れさまでした!」
「お、ありがとう。」
タオルを手渡すと笑顔で受け取ってくれた。