レオンさんはちょっと笑って、クリスさんの方へ向き直る。クリスさんはこちらに気が付いていないようだ。
いつぞやの仕返しとばかりに冷えたペットボトルをクリスさんの頬に押し当てた。
「うわっ!?」
「ジルさんからの差し入れです。」
「いつぞやの仕返しか…ありがとう。」
笑いながらクリスさんはペットボトルを開ける。この人の笑顔はなんだかあったかい気持ちになる。
と和んでいると急に眉間に皺を寄せるから驚く。どうしたんだろう。
「すまん、思いっきり投げたんだが、何処か捻ったりしてないか?」
「大丈夫です。何処にも異常ありません。」
「そうか。ならよかった…」
ホッとしたような表情で彼は眉間の皺を消した。そんな表情を見ているとなんだか胸の辺りがムズムズしてくる。締め付けられるような、そんな感覚。エクセラはこんな感じのことをなんと言っていたっけ。
「花子?」
「は、はい!」
難しい顔をしてしまっていたのか、クリスさんが心配そうな顔でわたしを見つめていた。わ、近い!近いよ!
「やっぱり具合が悪いんじゃないか?医務室に行くか?」
「いえ、大丈夫です!」
ぶんぶんと手を振ってわたしを医務室に連れて行こうとするクリスさんを止める。
『準決勝に出場するミスター・レッドフィールドとミスター・ストーンは用意してください。』
「お、ハニガンだ。クリス早く行けよ。」
「…ああ、分かった。」
無理するなよ、これで冷やすといい、と自分が飲んでいたペットボトルをくれた。まだ容器はかなり冷たい。
じゃあ、とくるり背中を向けるクリスさんを咄嗟に呼び止めれば立ち止まってくれた。
「あの、が、頑張ってください!」
「ああ、ありがとう。」
クリスさんの背中を見送ったらレオンさんが自分の隣をポンポンと叩くから、いいのかなあなんて思いながらも隣に座る。
この人はほんとにかっこいい。モデルさんみたいだ。でも、女の人と付き合ってるという噂は聞かない。全部、エクセラ情報だけれど。
「君が来てからクリスは変わったよ。」
「え?」
「なんだか、そうだな…アイツにもようやく春が…あ、試合が始まるみたいだぞ。」
「あ、はい…」
どういう意味なんだろう、聞こうとしてもレオンさんは面白そうに笑ってるだけ。なんなんだろう…