Chris | ナノ


ドサリ、そんな音と一緒にわたしが見ていた世界が180度回転した。わたしは1秒前に床を、正確には上司であるクリスさんの足を見ていた筈なのに。
あっと言う間に投げられて、高い天井を見つめていた。
背中に痛みが走ることはない。どうやら上手く力加減をしてくれたようで。自分がまだまだ非力だと実感させられて恥ずかしい。

大きな手が目の前に伸びてきて、その手をとれば逞しい腕に引っ張られる。

「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございました。」
「勝者はクリス。クリスはこのまま勝ち進んで、ジョッシュと対決してもらう。」


今日はチームWSの中の戦闘部隊内の大会だ。体術を競い合って戦闘部隊内の1位を決めてチームの士気を高める目的で、毎年夏に1回行われている。

午前中は隊員同士が直接戦うという形式で、午後からはマーセナリーズというゲームだ。WSの科学技術班が作った大量のロボット兵器相手に制限時間中戦って、一番多くのロボットを破壊した者が優勝となる。
ロボットは頭部を破壊しないと止まらないので射撃の腕が必要とされる。
また、体術などもポイント稼ぎに有効だ。
要するに、魅せる戦い方が大事なのだと主催者であるダディから聞かされた。
隊員たちの息抜きがてら、トレーニングにもなるらしく、わたしの父親であるアルバート・ウェスカーが発案者だ。

最近、ロボットを作るのを任されているバーキン博士を始めとした科学技術班の人々が廊下ですれ違う度に血走った目をしているのはその所為らしい。


それで、午前中の体術部門、一回戦はレベッカと試合して勝てたんだけど、二回戦でクリスさんと当たってしまい敢えなく負けてしまった。
もともと戦闘部隊で体術大会にエントリーする人が少ないからもう次の試合が準決勝だ。(ちなみにマーセナリーズは全員参加。)ジョッシュさん対クリスさん。

10分間の休憩を挟んで準決勝が開始される。わたしはタオルで汗を拭いながらレベッカとジルさんが座っているベンチへと向かった。

「あら、お疲れさま。」
「2人も、お疲れさまです。」
「花子、ドリンク飲む?」
「ありがとう。」

レベッカに手渡された紙コップの中身を一気に煽る。彼女お手製の冷たいドリンクは夏の暑さと激しい運動で疲れきった体をクールダウンしてくれた。

「クリスにこっちのペットボトルを持って行ってもらえるかしら。」

ジルさんから手渡されたのはタオルでくるんでいる冷えたペットボトル。頷いてクリスさんのもとへと走る。

クリスさんはレオンさんと何やら話しているようだった。後ろから近付くと、一瞬レオンさんと目が合った。





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