Chris | ナノ



「クリス、今帰りか?」
「隊長。そのつもりだが。」

帰り際、ウェスカーに声をかけられ、夕食を一緒にどうだと言われた。最近少しずつ氷河期に近付きつつある懐と相談してどうしようか決め兼ねていると彼が奢ると言ったから行くことにした。

連れてこられたのは俺だけではどう頑張っても来られないぞという高級ホテル。入るのを躊躇っているとウェスカーは手慣れた様子で入っていく。慌ててその背中を追う。豪華な内装に少しばかり居心地の悪さを感じながらエレベーターに乗り込む。ちなみにこの間、俺とウェスカーの間に会話はない。
あっと言う間に最上階のレストランに着き、ウェスカーは尚も立ち止まることなくそこに入る。ウェイターと二言三言交わした後に夜景がよく見える個室に通された。

「…」
「どうしたクリス。」
「いや、流石隊長クラスともなると通う店が隊員とは違うと思って。」
「ここはエクセラの実家と繋がりが深いんだ。」
「ああ成る程。」

エクセラは、と問えば花子と家で夕食だと返ってきた。

「そう言えば、花子はエクセラの親戚か?」

訊ねるとほんの一瞬だけ彼は目を丸くした。なんだその反応は。
「花子から聞かされていないのか…まあ、そうか。」
「どういうことだ?」

彼はしばらく俺をじっと見て、なにやら考えていたようだがワイングラス片手にお前ならまあいい、と話し始めた。

「花子は俺とエクセラの娘だ。」
「What?エクセラはまだ20代じゃなかったか?」
「最後まで聞け。正確には義理の娘だ、彼女の両親は日本人で、父親は既に他界している。彼女は10歳までを日本で過ごした。母親は科学者で父親は専業主夫だった。」

ウェスカーは花子の今まで生きてきた道を語り始めた。いつもの彼のように淡々とした喋り方ではあったが、何かが違った。



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