Chris | ナノ




ウェートレスに席に案内されて、俺たちは向かい合って座った。メニューに目を通して、適当なものを注文して話し始める。

「花子は?」
「ジルたちと昼飯さ。」
「ああ、なるほど。…あの子最近なんだか心配になる。」

どの辺りが、と聞くとお前が一番分かってるだろうと返された。まあそれはそうだが。

「まあ、ジルも一緒だからな。」
「なら大丈夫だな。」
「ああ。」

目の前に座る彼はコーヒーを啜ってから俺に資料の束を手渡した。どうやら話の本題はこれらしい。

「こどもたちのウイルスは定期的な解毒剤の接種で治療できる。」
「そうか、その解毒剤は?」
「花子のレポートを元にしたレベッカの提案が通った。来月から投与されるそうだ。まったく大した子らだ。」

そうだな、言いながら運ばれてきたサラダに手をつける。うん、なかなか美味い。

「花子に伝えてやってくれ。」
「ああ、必ずな。」
「たぶんこれを実現させるためにがむしゃらに打ち込んでるんだろう、あの子。」
「恐らくな。任務から帰ってきてから、4月の一番初めに来たときみたいな思い詰めた顔するようになったからな。」

早く安心させてやれよとレオンは自分のもとへと運ばれてきたクラブハウスサンドをかじった。俺も頷きながら自分の手元にあるピザを食べる。
あらかた食べ終わって、さあそろそろ戻るかとコーヒーを飲み干す。2杯目は流石にキツいなと思っていると、ポケットに入れていた携帯が振動した。発信者名はジル。

「ハロー?」
「ハロー、クリス。今何処にいるの?」
「レオンといつものカフェだが。どうした?」

ちょうどよかったわ、と言うジルの声には少し焦りが混じっているように思えた。

「花子が急に意識を失ったの。レベッカが見る限りは命に別状はないらしいんだけど…」
「今何処にいる?」
「あなたが今居るカフェテリアの向かいの店よ。」
「分かったすぐに行く。」

財布から2人分の代金を取り出して机の上に置く。今日は奢りだ。レオンに支払いを頼んで店を飛び出た。
向かいにある店に入ると奥に居たジルが手招きする。

「花子は…」
「多分、寝不足と極度の疲労だと思います。」

だから医務室に運んでいただきたいんです、レベッカが言う。頷いて、花子を抱きかかえる。あまりの軽さに少しだけ驚いた。
オフィスまでの距離は近いと言ってもやはり街中を女の子を抱きかかえて走っていると目立つ。街行く人々の好奇の視線に耐えながらオフィスまで走った。
医務室に駆け込めば、医師であるエイダが椅子に座ってカルテを眺めていた。

「騒々しいわね、どうしたのその子。」
「突然意識を失ってな。診てやってくれ。」
「ネクタイ緩めてからベッドに寝かせて頂戴。」
「ああ。」

首を締め付けているネクタイを緩めて、刺激を与えないようにベッドに横たえる。と、エイダは色々と調べたあと、しばらく休ませるべきだと判断を下した。

「無茶してるんじゃない?寝不足と疲労よ。意識がないと言うよりは深い眠りに落ちてるみたいだから。」
「そう、か…」
「まあここで2、3時間休ませて様子を見るべきね。」
「ああ、分かった。ありがとうエイダ。」

エイダは、用事があるからしばらく花子の様子を見てやってくれと言った。ベッドの隣にあったパイプ椅子を出してきて座る。花子はゆっくりと呼吸をしていて、少し安心した。

オフィスからノートパソコンを持ってきて仕事の続きをして、ジル達には少し休ませると連絡しておかないと。



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