Chris | ナノ


トラック内で座席に(と言っても床に直座りだが)座っていると、怪我の処置をされた花子が俺の横に体育座りのような状態で座った。

「よく頑張ったな。」
「いえ、クリスさんが色々と助けてくださったので…」

ありがとうございました、と花子は小さく礼をする。

「恐らく、これからもパートナーとしてやっていくことになると思う。改めて、よろしくな、相棒。」
「は、はい!」

そう言うと花子はくすぐったそうにはにかんだ。
一瞬、胸の辺りが締め付けられるような感覚に陥った。なんだこれは…俺も年だろうか、疲れているようだ。いやいや俺はまだまだ現役な筈だ。

「クリスさん?」
「ん?」
「どうかしたんですか?」

いつもより表情が柔らかいのは、任務が終わったからだろうか。少し疲労も感じられるが今まであまり見られることのなかった優しい表情をしていた。
ああ、打ち合わせの合間に話したときの表情によく似ている。

「いや、少し考え事だ。本部に着くまで休んでろ。」
「いえそんな…」
「休息も大事だ。睡眠をとれ。」
「わ、分かりました…」

花子は自分の膝に額をつけて眠りに入る。その様子を見ながら少し休もうと胸ポケットを探る、が、煙草のケースはもう空っぽだった。
まあいいか、俺も睡眠をとろう。
目を閉じて、静かに意識を手放した。







「ねえ、ジョッシュ見て。」
「ん?」

向かいに座っていたシェバが声を潜めて話すので、何かと思えばクリスたちの位置を指さしている。
見てみれば先月入隊してきたばかりの新人の花子がクリスの肩に寄りかかって眠っていた。いつも彼女が纏っている、何かを警戒しているような緊張した雰囲気はなく、少しだけ幼さが残る寝顔を晒していた。
クリスもクリスでそれに気付くことなく爆睡している。
なんだか兄妹が遊び疲れて眠ってしまったような、いや、親子かもしれない。

シェバはそれを微笑ましげに見守って…いや、面白がってるんだろうか、この場合は。なんにせよ、目の前の出来事はシェバによってジルの耳に入るだろう。
たぶんクリスはこのネタで3ヶ月ぐらいいじられるだろう。ああ、レオンに伝わっても悲惨かもしれないな。

二人とも、目を覚ましたらどんな顔をするだろうか。考えて少しだけ笑ってしまった。






目を覚まして外を見やると、まだまだ本部には着かないようだった。腕時計を見れば眠ってから4時間ほど経っていた。ということはそろそろ空港か。アメリカへの移動はヘリだったか飛行機だったか…
そこまで考えたところで肩に何か重みがあることに気がついた。

見てみれば花子が俺にもたれ掛かって眠っているではないか。安心しきった寝顔だった。起こさないようにしようと思いながら寝顔を見ていると、突然花子がぱちりと目を開ける。
しばらく辺りを見回してから俺と目が合って、心臓が跳ねた。瞬間、彼女は慌てて元は空いていた人1人分のスペースを取り戻すように飛び退いた。

「く、く、クリスさんごめんなさい!」
「いや、構わないさ。よく眠れたか?」
「そ、それはもう…」
「ならよかった。」

平静を装おうとして煙草を取り出して火を着けようとすると、離れた場所に座っていたジョッシュが「クリス、煙草が逆さだぞ。」とニヤニヤしながら言った。シェバも笑っている。
あいつら、見てやがったのか!



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