Chris | ナノ



銃を構えて部屋に突入すると、所長らしき人物がアタッシュケースにあるだけの金と注射器を詰め込んでいる最中だった。

「動くな!」

奴は俺たちの姿を認めると軽く舌打ちをして銃口をこちらに向けた。マグナムか、もろに食らうと危険だ。ここは下手に刺激しないようにしないと。
一歩前に出ようとした花子を手で制する。だめだ。

「この研究所の所長だな。」
「ああ、そうだ。」
「お前を逮捕しに来た。」
「素直に捕まると思ってるのか?」

首を横に振ると、そんな俺の様子を鼻で笑う気配がした。

「実力行使してでもいいから捕まえてこいと言われている。少々手荒いことをするぞ。それが嫌なら銃を捨てて投降しろ。」
「嫌なこったな。だいたい俺が捕まってもあの村が地獄になることは変わりないからな。」
「ウイルスをばらまくんだろう?」

所長は一瞬目を見開いたのちに、また下品な笑みを浮かべる。その笑みは悪意に満ちていた。

「知ったところでどうかな?お前たち2人じゃ何も出来ないだろ?」

花子に目配せを送る。彼女にも俺の意図が伝わったらしい、小さく頷いた。次、奴が言葉を言い終えるまでにケリをつける。

「…何も出来ないと思うか?」
「ああ!特にその隣のお嬢ちゃんだな、顔は可愛らしいけど非力そ」

途端に俺が所長に向かって走り出す。所長は驚いたように銃を構え直すが花子が手元を狙われてはじかれた。

「非力そうなお嬢ちゃんに銃を撃ち落とされた気分はどうですか?」
「く…クソッ。」
「所長、お前を逮捕する。」

身動きがとれないように拘束する。なおも暴れようとするので当て身を食らわそうとしたが、その前に聞くことがあった。

「ウイルスは何処だ。」
「言うかよ。」
「手荒い真似はしたくありません、答えていただけますね?」

言いながら花子は所長の腕を軽めに捻り上げようとする。奴は慌てたような声を出して場所を吐いた。

「西棟の倉庫内だ!」
「ウイルス処理班、西棟の倉庫内にウイルスが保管されている!」
『こちらウイルス処理班。西棟の倉庫内、了解。』
「な、外に待機して…」

奴がギリ、と歯軋りする。何か言おうとする前に今度こそ当て身で気絶させた。

「こちらクリス。本部応答願う。」
『こちら本部。』
「所長の身柄を確保した。」

『ご苦労、アルファチームと合流して、本部まで帰還してくれ。アルファチームも村での戦闘が終了したようだ。』
「了解。」

同時にアルファチームの面々が所長を確保しようと部屋になだれ込んできた。二人の隊員が俺と花子に敬礼をしてきたので敬礼で返す。
所長は隊員たちに担がれていった。今から護送車に乗せられていくのだろう。

「クリス、花子。」
「ジョッシュ、任務完了だな。」
「お疲れさまでした、ジョッシュさん。」
「ああ、ありがとう。」

さあ、帰るか。と研究所の入り口に向かう。花子も俺に続く。彼女が何か言いたげにジョッシュの方をチラチラと見ていて、なんだか微笑ましい。いや、そんな状況じゃないが。
まあ、気になるよな。きっとこの子はあの計画表を読んだときから不安で仕方なかったんだろう。

「花子、大丈夫だから聞いてみろ。」
「え!?」
「ん、どうした?」

先を歩いていたジョッシュが立ち止まって振り返る。花子は意を決したように口を開いた。





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