Chris | ナノ



実験室で大量のB.O.W.に囲まれながらなんとか応戦して所長室に向かおうとしたところ、突然花子が倒れ込んだ。
駆け寄って抱き起こす。意識はあるようだが呼吸が荒い。見れば横腹をやられたようで血が滲んでいる。
頬についた血を拭ってやってから包帯を取り出してくる。

「大丈夫か、待ってろ。」
「すみません…あの、大丈夫ですから早く所長室に…」
「…俺たちはコンビだろう。片方が負傷してまともに動けない状態で先に進めると思うか?」

かなりキツい言い方になったことに気付いて、しまったと思った。どうやら俺自身、無意識の内に花子に苛立ちを覚えていたらしい。
彼女に腹を立てるのは筋違いなのにだ。

取り繕おうとしても時すでに遅し、彼女は父親にぶたれたこどものような顔をしていた。真っ黒な瞳が見開かれたあとに伏せられる。長い睫毛が目の辺りに影を落とした。

彼女は精神的な苦痛を背負っているし、経験も浅い。そのことを考えずに何も言わなかった俺がいけなかった。
誰しもが突然現れた化け物や人を撃つこと、要するに命を奪うことにすぐに慣れるかと聞かれればそうではない。むしろ拒否反応を起こすのがふつうだ。


「あ、」
「…喋らなくてもいい。傷口に響くだろう。すまない、言い方がキツかった。ただ、危なくなったら無理せず俺を呼んでくれ。そのためのパートナーだからな。4月に言っただろう?君一人が戦ってるんじゃないと。」
「…はい。ありがとう、ございます。」

彼女の声は震えていた。患部に包帯を巻いて、手をとって立ち上がらせた。仕上げにヒーリング効果のあるスプレーをかけてやる。

「ありがとうございました。」
「歩けるか?」
「大丈夫です。」

二人で顔を見合わせてから所長室へのドアを開けた。



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