先ほどの村に戻ろうと俺たちは歩いていた。たまにどうみても悪意のあるトラップなどを上手くかわしながら、なんとか村にたどり着いた。
みな安全を確認して一目散に自分の家へと帰っていく。
こどもや家内を残してきたから心配だったのだろう。
村長の家に招かれた。彼は鍵のかかった棚から研究所と取り交わした契約書を見せてくれた。
「クリスさん、この団体の名前…」
「ああ、よくそう言う業界で聞く名前だな。表向きは善良な生物研究所だからな…」
村長が分からなかったのも無理はない。村長は、団体の目的はこどもたちの体内でウイルスを育てて世界中に放つことにあると言った。
『俺はこれから村民の家を回るよ。安否確認と、犠牲になっちまった人間のことを言わなくちゃいけないからな。』
「すまない、もう少し早く到着していれば…」
こんなことを言っても何も変わらないのは分かっているが言わずには居られない。
『いや、アンタ達には感謝してるよ、おかげで俺達だけでも生き残れた。…嬢ちゃんも、周りの奴らがギャアギャア騒いじまってすまなかった。アンタはよくやってくれたよ、だから気にすんな。』
「いえ…すみませんでした。」
村長に研究所への地図をもらって、それを頼りに山に入ることにした。その前に後から来るチームに状況を伝えておく。
「クリスよりアルファチームへ。村の様子を報告する。」
「アルファチーム隊長ジョッシュだ。報告願う。」
一通り報告して通信を切る。
「よし、行くか。」
「はい。」
「…大丈夫か?」
花子は驚いたような顔をしてから、焦ったように頷いた。…多分大丈夫じゃないな、この様子は。
「クリスさんの足を引っ張ることの無いように努めますので。」
「適度な緊張はいいが、あまり緊張すると人間は動けなくなるからな。力を適度に抜け。」
「す、すみません。」
「謝ることはないんだが…」
よろしく頼むぞ、相棒?そう言いながら頭に手を置く。彼女はびくりと肩を跳ねさせたあと、控えめに笑って頷いた。こんな感じのやりとりで少し、気が楽になればいい。
「もしプラーガが出てきた場合は極力俺が相手をするようにしよう。花子は閃光手榴弾やグレネードランチャーでの後方支援を頼む。」
「了解しました。」
「まあ大丈夫だとは思うが、生きて帰るぞ。」
「はい。」
荒れた山道を進む。相棒と一緒に。