Chris | ナノ



一年ほど前に、この村が所有する山の中に施設を作りたいと言い出す団体が現れた。
なんでもこの山の土の中にはまだ発見されていないウイルスが生息しているからぜひ研究させてほしい、ということだった。
村の長である彼は、村人たちと話し合いをしたあと山の資源を極力破壊しないこと、村人に害を及ばさないことを条件に研究所の設立とウイルスの研究を許可した。

そして今から1ヶ月ほど前、突然研究所の人間がやってきた。なんと、山で発見されたウイルスはこどもたちに害のあるものだったと言うことが分かったのだ。研究所が開発したワクチンを投与した方がいいとのことだった。
慌てた村人たちは急いでこどもたちにワクチンを投与させた。それから2日ほどたった日、村のワクチンを投与されたこどもたち全員が高熱で倒れた。
1ヶ月経っても彼らの熱は一向に下がらない。
研究所で投与されたワクチンが原因だと考えた村人たちが集まり、研究所に抗議しに行った。それが今この部屋に居る人々らしい。

研究所で抗議をしていると先ほどの大男たちに拘束されてこの小屋に連れてこられ、真実を教えられた。
こどもたちに投与したのはワクチンではなくてウイルスだと。そのウイルスは一年間こどもの体内にいると孵化して効果を発揮する。
つまり、村人たちは騙されていたのだ。最初から山の中にウイルスなど存在せず、研究所を作ってこどもたちを生物兵器にするための口実に過ぎなかった。

真実を知った人間を生かしておく筈もなく、この部屋に連れられてきた人間は別のタイプのウイルスを投与された。1時間ほどでプラーガと似たような症状が出るものだ。

「こどもたちは?」
『…村が無事なら、恐らくまだそれぞれの家で眠っている。高熱にうなされながらな。』
「…この人たちは投与されてから何時間経った?」
『もうそろそろ1時間だ。』

その声と同時、後ろから聞き覚えのある何かがヒュンヒュンと空を切る音が聞こえてきた。

…勘弁してくれよ。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -