「ジルさん、少しレベッカの方を見ていてもいいですか?」
「いいわよ。」
「レベッカ、もう一度やってもらってもいい?」
「ええ。」
マネキンに膝を着かせてから後頭部に膝蹴りを食らわす。グラップルニーか、確かに有効だ。
「あらいいわねそれ、レベッカにピッタリだわ。じゃあこれから私と訓練してみる?私の技も使えるようになれば便利ね。」
「はい、お願いします!」
「花子は私とは今日はここまで。」
「分かりました、ありがとうございました。」
レベッカとジルが練習を始める。花子がこちらに向かってきて、失礼します、と俺の隣に腰掛けた。
「ジルの体術はなかなかユニークだろ?」
「はい、とても参考になります。クリスさんのような技も使ってみたいのですが、わたしでは力不足のようで…」
少しばかり悔しそうな顔をして彼女は言うが、ジルの体術を使いこなせるなら十分だと俺は思う。
「女性には少し力的に難しいから、君が出来ないのも無理はない。」
「…そう、ですか…早くハーブや薬品の調合も覚えなくてはいけませんね。」
「花子、君は一人で戦ってるんじゃない。俺たちはチームだ。それは覚えていて欲しい。」
分かったか?そう訊ねれば彼女はこくり、と頷く。彼女の真っ黒な瞳には俺が映っていた。なぜかこの子の瞳は真っ直ぐ見られない。
「取りあえず、オフィスに戻るか。一週間後の任務のために資料を集めておこう。」