ナイフと彗星
ちょうどその日、わたしはアルくんと別々に下校していて(特に深い意味は無い、ただアルくんに部活があっただけで)。珍しく母親がアルフレッドくんもお夕飯に呼びなさいと言うから自室の窓から身を乗り出して、明かりが点いたアルくんの部屋の窓を叩いたのだ。そしてシャっとカーテンが開けられて、ニコニコ笑顔のアルくんがわたしに、やあと言ってくれた。ここまではいつもどおり。問題はその次の瞬間。
「おいアル、なんだ急に。」
見知らぬ男の人がアルくんの部屋から出てきた。
「い…」
「あ?」
「いやあああ!」
思わずカーテンを閉めてしまった。突然のことにアルくんは驚いたらしくしばらくして「ああ!」とカーテンの向こうから声がした。そしてどたんばたん、何かが暴れる音。
「花子、大丈夫だから。開けていいかい?眉毛モンスターは退散したよ!」
「…ほんとうに?」
「うん、本当さ!」
そろり、アルくんがカーテンを開けた。わたしも恐る恐る部屋の向こうを見ると、何も居なかった。…ベッドにこんもりと山が出来ているのは気にしないようにしよう。多分さっきの男の人だろうけど。
「あの、アルくん、さっきの人誰?」
「あれ、花子会ったことなかったっけ?アーサーだよ。」
「え、アーサー…って…」
「うーん、君はちっちゃかったからなあ…覚えてないかもだけど、昔ご近所に住んでた俺の親戚だよ。」
ざくざく、記憶を掘り起こしていくけど、あんまり覚えがない、けど。なんとなくあのぼさぼさの金髪と逞しい眉毛には見覚えがあった。