Alfred | ナノ


小さい頃から、男の子が大の苦手だった。彼らの行動はまったく予測不能で、がさつだし乱暴だし、何かにつけてすぐに人をからかうし。わたしはそれがいやだった。よく男の子に囲まれてからかわれていた。それは中学校の頃にもあって、その頃はもっともっと酷くて。俗にいう「行き過ぎたいじめ」の域まで達していた。
そんなときに、わたしの幼馴染のお兄ちゃんのアルフレッド・F・ジョーンズくんが彼らを追い払ってくれた。アルくんは泣いているわたしの涙を何度も何度も拭ってくれた。

弱いものいじめは許さないんだぞ!だって俺はヒーローだからね!花子がピンチのときはいつでも飛んでいってあげる!

そう言っていつもアルくんはにっこり笑う。彼も基本元気なやんちゃ坊主だったけれど、どこか紳士的だったのだ。わたしはずっと彼に助けられてきた。いつしか彼は本当にわたしのヒーローのような存在になった。

「花子、落ち着いたかい?」
「うん、ごめんね」
「謝るようなことは何もないさ。でも彼らも悪い奴らじゃないからね、大丈夫だよ」
「うん、ごめん」
「だから、謝るのはちょっと違うんだぞ!」

もう、これでも飲んでリラックスするんだぞ。とアルくんは私にシェイクを手渡した。私が好きな味。でもこれ、どの味もそんなに大差ないし、溶けちゃうと喉が焼け付くくらい甘ったるいし、大好きってわけじゃない。アルくんが飲んでるから一緒に飲む。

毎日相当なカロリーを摂取してるのにアルくんが太らないのは、多分朝早くに学校へ行って一人でバスケの自主練習をしてるからだ。それも相当な量。
彼はスポーツはなんでも得意で、一年の時点からもうレギュラーに選ばれるくらいの人で、練習なんていらない筈なのに隠れるようにして毎朝練習をしている。
一度どうしてそんなに練習するの?と聞いたら彼はいつものように得意げに笑いながらヒーローは人に隠れて努力をするのも大事なのさ、あ、これは内緒だぞ?と言っていた。みんなの完璧なヒーローであるためには鍛錬を欠かしちゃいけないらしい。なるほど、確かに彼の腕はたくましい。

「じゃあ帰ろうか。しっかり掴まってるんだぞ」
「うん」

ぎゅっと腰に手を回して、彼の背中に密着するようにする。アルくんからは香水の匂いはしない。代わりにいつもおひさまのにおい。わたしはこの広い背中がいつだって大好きで、泣きたくなるくらい安心してしまうのだ。

もうそろそろ夏の溶けてしまうような日差しは遠のいて、空がどんどん高く青くなる。

それはもうすぐだと知らせるように、冷たい風が、スカートをなびかせた。
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