若葉が芽吹くのに、本当に土は必要なのだろうか。水は、光は必要なのだろうか。

人の心に、支えは必要なのだろうか。温もりは、癒しは必要なのだろうか。 その答えは、太陽が東から西に沈むように、空が青いようにわたしの中で当たり前に染み込んだ。他でもない、あなたたちの手で。



「おーい、名前何やってんだよ!早くこいよ!」

「そうだよ名前ちゃん!僕の腕前を見てみて欲しいんだ!」

「名前さん、……一緒に見ましょう」



そう言って笑うモルジアナに続き、アラジンとアリババがはにかみながらわたしの手を引いた。わたしたちが今滞在しているシンドリア王宮の天気は今日も晴れ模様。とても清々しい日である。裸足の足の裏に当たる草がつやつやとして気持ち良い。

そんな引っ張り凧のわたしはというと、未だに慣れない状態に照れながらも……うん!という返事をするので精一杯だ。だけれどそれくらいの事で顔をザガンのようにグニャリと歪ませる事もなく、寧ろ自分にとても幸福な出来事が起こったかのようにえくぼを深くさせる彼ら。傍にいるだけで布団にくるまれているみたいにぽかぽかとする心臓は、もうそれからは離れられない事を指している。


それでも、それでも一度心を掬い上げられたから、掬い上げてもらえたからこそわたしはそう思える気がする。 気がする、なんて曖昧だけど、それしか言い表せないのだ。 ひとり悶々と考えながら足だけを動かしていると、ヒョコッとわたしの顔をアラジンが覗き込んだ。わ、びっくりした。



「名前ちゃん、ボーッとしてるよ?眠いのかい?」

「ううん、ちょっと考え事してた」

「そっかぁ!ならアリババくんとモルさんとそこで見ていて!きっと驚くよ!」

「そうだぜ名前!何たってアラジンの魔法でアッと驚かせてくれるらしいしな!」

「……私もとても楽しみです」



人の嫌悪を含んだ眼差ししか感じない所で、かつては独りでいたわたし。あの日の心をかちこちに凍らせた、ひとは一人でも生きていけるのだと、それが世界のアタリマエだと思っていた幼いわたしが問うてくる。「"わたし"は、そこにいて幸せ?」 ……幸せだ。幸せ過ぎて怖いくらいだよ。

それだけを聞くと、安心したかのように目尻を下げて瞳を少し潤ませながら瞼の裏にじんわりと染み込んだ幼いわたし。ありがとう、アラジンにアリババにモルジアナ。あなたたちが居なかったら、こころは永久凍土になっていたんだよ。

鳥の形に似た杖を握りしめて笑ったアラジン。その杖先から丸い炎がぽん、ぽん、と翔び出してふよふよとわたしたちの周りを漂い始める。綺麗だ。



「ほら、今からだよ!それっ!」



声を弾ませながら言うアラジン。その途端、その炎の玉がしゃぼん玉のように小さくはじけて輝いた。それは空に架かる七色と同じ色。わたしは感動で思わず声をあげていた。



悪戯が成功した幼子の如く、三人の顔がきらりと輝く。三人も、この七色と同じなのだ。口元が綻んでしまうと、更にきらきらする三人の瞳が目の前にはあった。



「最近名前がボーッとしてる事が多いからって決めたけど、大成功だったな!」

「うん!」

「はい」



わたしを心配して元気付けようとしてくれていた彼らにいつか伝えよう、あなたたちは、わたしにとっての"土"であり"水"であり"光"であることを。





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いやあ、日付が変わる前に完成させようとしてましたが間に合いませんでした!

明日、というか今日ですね。アニマギ二期放送、おめでとうございます!ずっとずっと、待っていました。こころが重なりあうマグノシュタット編、しっかりとアニメも結末まで見たいと思います。

久しぶりの動くアリババちゃん、スパルトスさんに初めて動くティトスくんを楽しみに模試も勉強も頑張ろうと思います。ありがとうございました!









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