キン、キン、と研ぎ澄まされた刃同士がぶつかる音がこだまする。王宮にある小修練場で剣を交わしているのはこの国シンドリアの八人将である剣術士シャルルカンと、食客をしているアリババ・サルージャであった。そんな二人の関係はというと剣の師匠と弟子、つまりは修行をしているのだ。

そしてその横で、息を整えながら修行を眺める少女がいた。彼女もまたアリババ達と旅をしている一人であり、シャルルカンの弟子でもあった。こちらも武器は剣である。先程までシャルルカンと打ち合いをしていた彼女は、彼の交代の合図が出たので、今は休憩中だ。


そんな彼女の名前は名前。アリババの友人であり、ライバルでもあった。ライバルというのは剣術に関してであり、シャルルカンからお互いに切磋琢磨しながら負けんな!と指導されているからだ。普段は仲が良いが、修行となると空気は一変。厳し過ぎる指導の元、アリババはアモンの移し替え、名前は眷属器の発現を目指して猛特訓している。



「アリババ真面目にやれコラァ!!!」

「し、師匠ぉ!俺真面目にやってます!!!」

「何だとぉ?!ふざけてるようにしか――…、っと、もう昼の鐘かよ!よし修行一旦休憩!昼メシ食いに行くぞ!!!」



いつも通りスパルタ特訓なシャルルカン師匠は、アリババをこれでもかとしごいていた。だが昼の鐘が鳴った途端、さっと踵を返して昼食を食べに行ってしまったのだ。何という自由気ままさ!ジャーファルさんもびっくりだ。


対してアモンを早くバルバッドの宝剣に移し替えるために扱かれ続けていたアリババはというと、情けない声を出しながら小修練場の床に大の字になった。私も気持ちは痛いほど分かる、お疲れさま。 暫く息を切らしていたアリババの横に私が座ると、ちらりと視線をこちらに向けて話し掛けてきた。



「なぁ名前…、今日の師匠、なんかいつもより厳しくなかったか?」

「アリババまだまだだね。私は普通だったよ」

「マジかよ〜〜…!俺もゼッテー負けねー……」

「ま、お疲れさま」



そう言って水筒を差し出すと、アリババは飛び起きてがぶがぶと勢い良く水を飲んだ。あ、むせた。
今みたいな会話を毎回のようにしているし、弟子同士だからいつも一緒にいる私たち。だけど、こんな可愛くない憎まれ口を叩いてしまう私のせいで、どこか恋愛的な距離は遠い。実は、私はアリババの事が恋愛の方で好きなのだ。彼は私の憧れでもある。そんな事、面と向かってあいつには言えないけど。

バルバッドの件では、一番の勇気と真っ直ぐな意志を見せたアリババ。シンドリアで食客として居させてもらって修行をいつも頑張る姿も、私は仲間として、友達として知ってる。だからこそ私も、負けたくない。ひたむきに前を向く彼に劣ったままでは、気持ちなんて伝えられないもの。



「そういえばさぁ、名前」

「何?」

「何で毎回水筒用意してくれてるんだ?これ、お前飲んでないだろ?」

「はっ!?べ、別深い意味とかないから!」

「ありがとな!優しい優しい名前ちゃん!」

「〜〜…!!」



突然アリババが質問してきた内容に、一瞬言葉が詰まる。好きだから、とか絶対言えない。と咄嗟に口から出たのは、そう言ってるのと大して変わらない内容の返事だった。私のバカ!ニマニマしやがってアリババめ!どうせ鈍感だからツンデレとか思うだけで気付いてないんでしょもう!! 思わず自己嫌悪。


南中しきった太陽は、王宮の屋上にある小修練場にさんさんと降り注ぐ。中庭の方では昼食に向かいながら和気あいあいと話す兵士の皆さんの姿が見えた。あーあ、こんな奴でも私、アリババが好きなんだからね、しょうがない。何だかんだ言いながらいつも愚痴を聞いてもらったりとこんなにも甘えている自分を思い返す。

中庭とこの小修練場はなかなか距離がある。けど、多分私はこれくらい、いや、どれくらい離れていようとアリババだと分かる。と断言できるくらい彼に夢中にさせられているのだろう。今だって、お腹空いてる筈なのに待っててくれてるし。行ってもいいのに、ばか。



「アリババ」

「なんだ?」


「ありがと」



それを聞いた後、黄色に近い金の髪を風になびかせながらにかりと微笑む彼が輝いて見えた。私の心、降参です。





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今週のサンデーとBSの希望の光みたいなアリババちゃんへの気持ちが高ぶったので小説に詰め込んでシャウトしました。







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