あの後彼女と家の前で別れて、父や母、それに可愛げのないと見せ掛けておいてツンデレな妹(だと私は思っている)に出迎えられながら帰宅した。いつも騒がしい家族たちは時に鬱陶しく感じることもあるが、それよりもあたたかくて居心地のいい大好きな場所という気持ちの方が強い。こんなこと言ったら私恥ずかしさでしねるね、うん。
ムムッ…この匂いは…、今日の夕飯はハンバーグに違いない!と思い、軽やかな足取りでリビングへ向かう。ビンゴだ。



「美味しそおおおおお!早く!みんな!席に着こうよ!早く!」

「まったく…名前には落ち着きってもんは無いの?」

「お姉にんなもん無いでしょ」

「そうだな!」

「家族みんなでいじめやがって…!いただきます!!」

「お姉ドンマイ」



私は妹の慰めようという気持ちの一切籠もっていない慰めを半分無視しながら箸でハンバーグを切った。流石お袋の味、飯がどんどん進むぜ!がっついてる私を見て可哀想なものを見る目をしているお袋当人は私は知らない、見ていない。元気があればなんでもできる!
しっかりと米一粒も残さず食べきった後、父が風呂に入ると言うので私は二階にある自室へと登った。お腹くるしい、食べ過ぎたかな!



「うほあぁ…今日は本当に空気が澄んでるよな…」



独り言のようにつぶやきながら部屋の窓を開ける。やっぱり寒い。けれども、真冬のキッと気分を引き締めてくれるようなこの空気が私は好きだ。
ふっと自分のデスクに置いてあるブレスレットに目が行った。きらりと月の光が反射するそれを暫く見つめると私はおもむろに立ち上がり、腕にそれをするりと着けた。そしてまた空を見上げる。



「……………」



そのまま無言で月をじっと見つめていると、不意に腕の辺りが光った気がした。ぱっとそちらを見ると、特に何も変わらないので気のせいか、とまた目線を戻す。
あれ、月がぼやけていないか。何度かまばたきをしてみたがやはりぼやけている。そして意識がふわふわとして曖昧になる、けれどもしっかり目はあの空に浮かぶ球体を見ている。



「えっ…………?」



そう呟く間もなく、私はそう、まるで月に向かうかぐや姫の様に。いや、そう言うと違う気がする。まるで、地上ではなく天に向かって零れ落ちる流れ星の様に月に吸い込まれていったのである。







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