きっかけは、放課後に買ったブレスレットなのかなと思う。
部活が終わって学校から帰る時、たまたま目に入った店先で売られていた天然石でできたこれ。値段を見てみても私の持ち合わせで買える、と思って購入したそれは、まるで満月のようにまんまるの石が紐で通されていた。
綺麗に研磨された石は美しい輝きを放っていたけれど、どこか幽玄、と表現したらいいのだろうか、そんなものを孕んでいるような気もした。



「かなりのお値打ち品でしたなあ…」

「私にとってどうでもいい」

「さっすがマイベストフレンド!その言葉、グサッと心に響いたよ!」

「………」

「すいませんまじでその蔑む目やめてください」




はあ、と息を吐き出せばふわりと白い水蒸気に変わって夜の寒空へと吸い込まれていった。マフラーを巻いていても寒さが全身を包んでいる。
少し前を歩く友達はこんなに冷え込むというのにけろりとしている、彼女いわく「私は暑い方が苦手」だそうだ。冷え性の私としては非常に羨ましい。
ああ、毛並みがふさふさの動物と戯れたい。そう思いながら口をついた言葉に彼女は呆れと哀れみを混ぜ合わせたような顔をした。



「こんな夜はアニメーガスな親世代もふもふしたいよねー!」

「殴り飛ばしていい?」

「さーせん調子乗りました」

「名前が調子乗ってるのはいつもの事だから気にしてない」

「てへぺろ!」



仲の良い友達のムッとした顔やこの夜の闇にほとんど周りを包まれている帰り道を見つめる。無意識のうちに私は腕に着けている四種類の天然石がしゃらりと擦れ合う音を聴き、それをふわりと触った。


空に浮かぶ、まるでこの石のようなまんまるな月が黄金に輝いているのを見てふと思う。ああ、そういえば、あの魔法学校に通っていた頃の彼らは、こんな夜はどうしていたんだろう。そして、ゆっくりと夜空にまたたく星を見上げた。




「星、綺麗だねえ…」

「ホントだ、あんたまた親世代の事考えてるんじゃないの?」

「………ギクッ!私は星を見たら視力がよくなるかな?と考えてるだけででででですすよ!」

「今時ギクッなんて口で言う子あんた以外にそうそう居ないと思う」

「ですよね!」





会話が途切れた後の沈黙も、ぜんぶ全部この闇が包み込んでいるような気がした。







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