太陽が落ち、月が高く上った熱帯気候のこの国は、只今人々の熱気と賑やかさに包まれている。辺りからは打楽器を奏でる音と、この国の民族衣装である花の冠を頭に被せた国民の忙しくも楽しそうな話し声が耳に入り、私まで楽しい気分になってきた。

そう、今日はシンドリア王国のマハラガーン、つまりはお祭りだ。そこかしこに灯る明かりと、漂ってくる美味しそうな食べ物の香りに誘われながら、隣で私と一緒に街のお母様方にマハラガーンの女の子の正装に着替えさせて貰うモルジアナはとても可愛い。お姉さん、あなたが年下だとは思えない位に大人っぽいね?!と、私は一人で心の中で葛藤をした。



「ナマエさん、どうしたんですか?こちらをじっと見て…」

「え?!あ、ああ!大丈夫何でもないよモルジアナ!」

「そうですか。…それよりも、この服はヒラヒラしていますね…」

「モルジアナはすっごく可愛いから大丈夫!私は最近体重が増えたから…ウエストが…うう…」

「はい、お姉ちゃんたち出来たよ!可愛い子は皆に花飾りを配っといで!」



自分のウエストが恨めしい…!とモルジアナに力説していた所で、お母様方の着付けが終わったらしい。ありがとうございました!と二人でお礼をしてお面を被り、照れるモルジアナを褒めちぎりながら、私達は花飾りを配りに歩を勧めた。


二人で花飾りを配っていると、遠くには楽しそうに話をするアリババとアラジンが。モルジアナの肩をトントン、と人差し指でつつき、その後あちらを指差せば気付いてくれたらしく、足取り軽く二人を目指した。

二人で声を出さずに花飾りを渡せば、デレデレしながらモルジアナを褒めるアリババに大笑いしてしまった。それに気付いたアリババたちは、ようやく私達がナマエとモルジアナだと気付いたみたいだ。えっ?というような間抜け顔の彼がやっぱり面白くて、また笑ったら怒られてしまった。ケチ。




「モルジアナ!アラジン達も男子だけで行動するみたいだし、私達も女子で行動しよう?」

「はい、ナマエさんと過ごすのは楽しくて好きです」

「モルジアナ好き!!!」



夜風にファナリス、戦闘民族の特徴である暁色の髪を揺らせながら、おずおずと言ってくれた彼女にノックアウトされた。なんだこの可愛い生き物。思わず嬉しさとうずうずとした気持ちが沸き上がってきて、モルジアナこっち!と言うと私は傍にあるアクセサリー屋の明かりを目指した。


店頭に並ぶ商品には首飾り、耳飾り、腕飾りなどきらきらとした細やかな輝きを放つ物が沢山並んでいた。その中でも私の目を引いた物があった。金色だけど、所々赤い花のチャームが入っている腕飾り。モルジアナに似合いそうだし、何より可愛いかった。

私はそれを二つ手に取ると、店のおじさんに渡して会計をしてもらう。そしてモルジアナとそこから少し離れると、彼女に買ったばかりの腕飾りを渡した。



「え?ナマエさん、これは…」

「いいのいいの!今日の記念に私からのプレゼント!受け取って?」

「…ありがとうございます」

「それでいいんだよ!私も同じのやつ買ったし、お揃いだね!」

「はい、嬉しいです…ずっと大事にしますね」



本当に、本当に嬉しそうに微笑んだ彼女に思わず二人で顔を見合わせて笑った。マハラガーンの夜は、まだ長い。









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