「しっかしよォ…午後からはピスティ達と交替になったから俺たちは休みなんてラッキーだよなァ!」

「最近私は休みを頂く事が多かったからな、あまりラッキーとは言い切れない」

「カァ〜っ!!お前やっぱ固ったいなスパルトス!」

「我が王と愛するシンドリア王国のためならば、仕事すらも惜しくはない」



太陽が頭上、建物の真上に登った頃、朝にシンドリアの港を出発したはずのシャルルカンとスパルトスは、国営商館の方まで戻って来ていた。王宮に戻らずに何故こちらの方まで来ているかというと、シャルルカンが行きたいと駄々を捏ねた事と、スパルトスも自身の武器である槍の手入れに必要な物を切らしていたからである。
午前は海上警備で南海生物達の対応をしていたスパルトス達は、未だに昼食すらも取れていなかったため、先ずは昼食を取ろうと国営商館エリアを練り歩いていた。隣を腕を頭の後ろで組みながら歩くシャルルカンは、せっかくだからエウメラ鯛とか食ってくー?等と意気揚々としているのだからどうしようもない。

まあ確かに、腹が減っては何も出来ないな。そう思ったスパルトスは、シャルルカンに向けていた若干呆れを含む眼差しを普通に戻した。紅よりは少し茶色がかったスパルトスの髪を温い風に揺られる。国の中でも国外からの商人や客で賑わうこのエリアは、市街地とはまた違う活気を彼に感じさせた。今日もいい一日だ。挨拶をしてきた国民に挨拶を返すと、シャルルカンと共に何を食べるかをまた話し合い始めた。



 ― ― ー



まいどありがとうございました!シャルルカン様、スパルトス様!と飲食店の店主に見送られた二人は、再び国民商館エリアをぶらぶらしていた。と言っても、シンドリアの守護天使八人将である限りは、休みであれども街の見回りがあるようなものなのだが。

さっきの魚はうまかったな。何でスパルトス鯛食わなかったんだよ!昼からそんな贅沢をしていてはいけない、せめて夜にすべきだ。というような雑談をしながら人の間を縫って行く。次はスパルトス達は武器を手入れするための道具を買いに行くのだ。何を隠そう、スパルトスの趣味は自分の槍の手入れというストイックな趣味。そしてシャルルカンは剣を愛する剣術士。反対意見など出る筈もなかった。

スパルトスはさっきから話題を尽きる事なく話続けるシャルルカンに感心する。主に我がシンドバッド王とマスルール、バカ女で構成された話は、よく聞き慣れた話題ばかりであった。全く、と口許を緩めた時、タイミング良く武器屋に二人はたどり着いた。



「すまない、いつもの道具を頂きたいのだが」

「お〜ッス!俺もいつものでヨロシク!」

「はい、ただ今!」



元気良く暖簾を先に潜って行ったシャルルカンと共にいつもの道具を注文する。店主はそれを聞くと笑顔で奥まで引っ込んで行った。いつも有り難い限りだ。巾着を受け取ったスパルトスは、大切にそれを手に持った。

そんな時、外が何やら騒がしくなった。残念ながら今日は行事も何も無いし、パフォーマンスのように騒がしいが楽しげな歓声は聞こえない。…まさか、トラブルか。そう判断をした彼は、シャルルカンを連れてその騒ぎへと向かったのである。






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