いきなり現れた黒い服のガキ大将、という感じの少年は、さっきの言葉からすると三つ子たちを探していたみたいだ。そのぐりぐりとした目を鋭くさせ、いかにも怒ってます、という空気を放っていた。何でだ、竜持くんたち何をしたんだ。冷静に笑みを浮かべながらその子を見ている三人にこちらが冷や汗をかく。状況の把握が出来てない私は、取り敢えず黙っておく事しか出来ない。

すると、その子は更に重ねてお前たちなんでサッカーじゃなくてテニスなんかやってんだよ!とまたしても勇みだすので、凰壮くんが呆れたのか馬鹿にしているのか分からない顔付きで、「お前に教えることじゃねーよ」とか言いだした。お姉さんはもうお腹が痛いです、凰壮くん。



「相変わらずムカつく野郎だな!降矢!」

「じゃあ俺たちが見えないとこまで帰ればいいじゃんか」

「須黒クンも、相変わらず暑苦しいですねえ」

「〜…ッ!くそ!取り敢えず降矢!俺らと勝負しろ!!」



虎太くんを除く三つ子の返事でどんどん険悪になっていく空気。こんなに空は晴れ渡っているのに、まるで雷雨のような場を私は一体どうすればいいのだろうか。頭をフル回転させて悩んでいると、須黒くんとやらの後ろにビクビクとしながら控えさせられていた、二人の男の子がやっぱ無理だって!と叫んで逃げ出した。

階段を登って行く男の子たちを追い掛けて、須黒くんも階段を登って行ってしまった。一部始終を見ていた三人は、まあ、面白そうなので行ってみましょうか。という竜持くんの提案を皮切りに、ラケットを置いて階段に向かって行く。私もラケットを手早く収納し、木漏れ日がちらつく段差に足を掛けた。



「ゴールを決めるか、ボールを奪ってホールドしたら攻めと守りを交代。それでいいですか」



なんと、階段を上って着いた美咲公園には、つい先日会ったばかりのエリカちゃんと翔くん、そしてエリカちゃんの犬がいた。やっぱりみんな可愛いなあ、元気いっぱいの二人と一頭に先程までストレスをビシバシ受けていた心が安いだ。

けれど、須黒くん達と三対三での試合を竜持くんたちがする事になったので、私はまた気を引き締めた。前の試合は結局見てなかったからな。三つ子や他の子達の実力がどうなのかが気になっていたから、サッカー観戦好き家族の長女としてはしっかり見ておきたい所。

…ベンチに寝転がっていびきをかいている酔っぱらいのおじさんは見なかった事にしよう。大方自宅警備員の方だろうし。ザックがべろべろとそのおじさんの顔を舐めて起こしているが、私は視線を子供たちに向けた。



「いくぞっ!」



須黒くんの掛け声と共に、エリカちゃん、翔くんとパスが通るけども、凰壮くんが前に立ちふさがる。フォローが早い。三つ子たちはその実力を見せ付けてあっという間にボールをホールドしてしまった。

三つ子たち、あんなに上手かったんだ。よっぽど努力しないと小学生ではあの域にはいかないはず。そのテクニックに私は思わず感嘆した。先程まで寝ていたおじさんも、ベンチから起き上がって試合をじっと見ているくらいだ。次は竜持くんたちから。ボールをでスルスルとパスし、笑みを浮かべて頭でキャッチする竜持くんたちにマンマークの指示が飛ぶ。

うわ、ルーレットに…わざと狙ったオウンゴール。へえ、と見ている所で、おじさんがふらふらと試合をしている方向に向かって歩きだした。え、と思ったら、翔くんが声を掛けた。知り合いなの、翔くん。



「おいオッサン、邪魔だから向こう行ってろよ」

「この人もサッカー上手いんだよ。ヘディング教わったんだ!」

「知り合いかよ。あ、そうだオッサン、翔の方のチームに入れよ」

「何?」



凰壮くん!そう叫びだしたくなった。またあの子は他人に対して生意気な…私の時はもっと酷かった気がするけど気にしない。

さて、どんな試合になるのかな。私はザックを一撫ですると、ベンチへと腰を掛けた。






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