今度は私のサービス。何時もの様に太陽に向かってボールをふわりと上げて、サービスエリアの隅に力を込めて叩き込んだ。そこに居た竜持くんは、それを拾おうとして間に合わなかった。どうだ、思い知ったか。私はそうとでも言うようににこりと笑いかけると、相手も悔しそうに口の端を歪めた。

へえ、やりますね。と軽い調子で言いながらも目は笑っていない。対する後衛の凰壮くんはまあまあだな、などと言いつつ値踏みをするような目線だ。仕返し成功!さあ次のサーブだ。




「虎太くん」

「……………分かってる」




お昼時になってきて春の外気がどんどん上がる中、向こうのコートの二人は何か一言二言言葉を交わした後ラケットを構えた。さっきと同様私がサーブを打つと、やはり予測をしていたのか打ち返される。取れない。かと思いきや凰壮くんがフォローに回ってくれていたため大丈夫だった。パコン、と後ろでいい音がする。

前衛の竜持くんはそれを手首を柔らかく使い、ボレー。楽しい!やはり体人戦でしか体験できない楽しさはある。私はそのボレーを打ち返して吹きそよぐ風を感じた。




 − − −




試合の決着が着いた頃にはちょうど正午くらいになっていた。もうこんなに経っていただなんて信じられない、すごく楽しかったからか。ベンチ付近で飲み物を飲んでいる三つ子達は息が切れていない。何故なんだ、体力が半端無い。



「なかなか楽しかったですよ、苗字さん」

「こっちこそ。まあ負けちゃったけどね」

「なんであそこで取れなかったんだよ」

「あれは…!その…い、いいでしょ!そのあと一ポイント取れたし!」

「そういう事にしといてやる」



水分補給も終了し、もうすぐお昼なので全員荷物を纏め始める。そうだ、三つ子みたいな強い子がいた高校あったっけ。聞いてみよう!と意気込んでラケットをケースにしまっている竜持くんに声を掛けてみる。



「ねえ、竜持くん達ってどこの高校に通ってるの?」

「あぁ、その話ですか。ぼくたち、実は小学生なんです」

「え?………えええええ?!!」



立って喋っている私を見て少し納得したように頷くと、さも当たり前と言うようにそれを言い放った。え、こんなに強くて、背が高くて、生意気なのに?最近の子は発育が良すぎる、私は発育が良くないのか。


とりあえず驚くだけ驚いた所で気を取り直して小学校がどこかを聞いてみた、桃山小学校、なるほど。また機会があればだけど試合を出来ればしたい。

私は片付けが終わったのでケースを背負って出口の扉へ歩きだし、扉の一歩手前でぴたり、と止まってあちらを向く。風に煽られて桜の花弁が少し舞ったと思うと、凰壮くんがなんだ、と声を上げた。




「今日のテニス楽しかったよ!あと、私が一番お姉さんって分かったし」

「精神面では俺たちの方が上だな」

「凰壮くんそれどういう意味。まあまたコートで会えたらテニスしたいね!」

「…ああ」

「じゃあね!」




私の片手で手を振りながらキィ、と扉を開け外に出て歩きだす。

誘いを受ける彼らは、私の様にテニスを楽しい!したい!というような表情ではなく、ただ、何かを含んでいる様な、そんな表情をしていた。太陽が少しだけ、眩しく感じた。







4





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -