「すいません。良かったら、試合をして頂けませんか?」




いきなり背後から掛かった少し自信が有るような、人を小馬鹿にしているような、そんなトーンの声。びっくりした、そう思いつつ後ろに振り向くと、前髪をぱっつんにした背のまずまず高い男の子が立っていた。緑色のラインが入ったジャージを着てラケットを持っている彼の背の方には、多分兄弟だと思われる赤いラインにセンター分けと黄色いラインに髪の毛をツンツン逆立たせている二人の男の子がいる。

ちょうど相手が欲しくて仕方がなかったのだ、ナイスなタイミングに思わず口元を緩めそうになって引き締める。近くの時計を見てみると、今は十一時。いいくらいの時間だ、一時間はまだ余裕。私は上機嫌に口を開けた。




「いいですよ。試合、しましょう」

「それは良かったです。ぼくたち、三人なので一人余っちゃうんですよね」

「はい。じゃあシングルスですか?ダブルスですか?」

「ではダブルスで大丈夫でしょうか」

「もちろん、です」





そう返事をすると、男の子はこっちに来いとでも言うようにスタスタと残りの二人に歩き始めた。おかっぱ君、とでも仮に呼ぶことにしよう。彼は残りの二人と話し合ったかと思うと、ジャンケンをしだした。まあそうか。

決着がついたのか、くるりと緩慢な動作でおかっぱ君が振り向き、にこりとしながら話し始めた。早く早く、試合を早く始めたい!そんな気持ちで話しが終わるのを待つ。




「さっき決めたんですが、貴女はこちらの凰壮くんと組んで試合をしてもらいます」

「足引っ張んなよな」

「凰壮くん、失礼ですよ。彼女の実力はまだ分からないんですから。そして僕は竜を持つと書いて竜持です。よろしくお願いしますね」

「う、うん」




あのセンター分けの男の子はおうぞう、鳳凰の凰に壮大の壮。彼はふてぶてしい態度でイラッときた。気にするな私、ダブルスのペアだぞ。竜持くんもフォローしている様に見せ掛けて私を嘗めている。そしてツンツン髪の男の子は虎で虎太くんと言うのだと紹介された。彼らは三つ子らしい、三人ともすごい名前だ。


私も自己紹介を済ませ、やっと終わった説明に待ってました!とばかりにコートに入る私。じゃあセルフカウントで、と呟いた竜持くんの声を皮切りに凰壮くんが力強いサーブを打った。サービスはこちら側だ。



「竜持、これは打ち返せるか?」

「流石凰壮くん、ナイスサーブですね、っと」



挑発しながら打った凰壮くんのサーブを、さらりと髪を揺らしながら竜持くんがバックで打ち返す。余裕しゃくしゃくじゃないか、絶対に打ち返してやる。前衛の私はネット際に詰めてスマッシュをする。決まった!と思ったが、その渾身のスマッシュは虎太くんにより打ち返されてしまった。

そのボールは私の顔の横をびゅんびゅん風を切って通り過ぎ、フェンスに当たって落ちた。周りの木から葉っぱが落ち、青空に舞い上がる。なにあれ、どれだけ力強いの。



「虎太くん駄目じゃないですか、コートに入れなきゃ」

「…ああ」

「すいません、苗字さん。やめたかったらやめてくださっても大丈夫ですから」




こいつ、私を完全に挑発しているんだ。そう言われると、俄然負ける訳にはいかなくなってきた。やってやろうじゃないか。私は大丈夫、と言い返すと、コートで自分のポジションに着く。


竜持くんが目の前でうっすらと笑った。






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