空が茜色に染まっている。
あぁ、もう逢魔ヶ時か。フルに使い疲れきった頭でぼんやりと考える。

何故だか今日はとても忙しかったように思う。
王様はいつもの如く仕事をサボり、それを探しにジャーファル様も少しの間抜けて、あぁ、それからシャルルカン様とピスティ様へのお説教にも時間がかかっていた。
仕事が早く的確な指示をくれるジャーファル様が抜けるのは痛い。


ぐぐっと背伸びをすれば骨がポキポキと鳴った。
生暖かい風が頬を撫でる。なんだか湿気を含んでいるようなその風は少し気持ち悪い。
だけどその生ぬるさに春を感じた。

そういえば最近草木が生い茂って来た気がする。あの庭にある大きな木にもピンク色の可愛い蕾がこじんまりとくっついていた事も思い出す。
足元を見れば小さな花が夕焼け色に染まっていた。


「もう春だな」


まさに自分が思っていた事を言い当てられた気がして振り返る。
そこには我らが八人将の一人、スパルトス様がいらっしゃった。


『そうですね、春でございます』


立ち上がりながら言えば少し不思議な顔をされた。


「こんなとこで座っているからもう仕事が終わったと思ったのだが……まだ終わってなかったか?」

『あー……終わったよ』

「そうか、なら良いんだ。お疲れさま」

『ありがとう。でもスパルトスの方こそ疲れてるでしょ』

八人将の方にこんな砕けた口の聞き方をしたとなればファンの方々に刺されてしまいそうだ。
私とスパルトスは所謂同期というか、私がシンドリア行きの船に乗っていた時にたまたまスパルトスが居合わせただけの間柄である。

田舎に住んでいた私はシンドバッドの冒険、つまりは王様の書物を読み迷宮ではなくシンドリアに憧れた。
こんな素敵な冒険をしたシンドバッド様に一目会いたいと思ったのだ。
しかし船に乗ったのは良いけど一人では心細くて、年齢の近そうなスパルトスに話しかけたと言うわけだ。知らないって恐ろしい。
結局シンドリアに着くまで気付くことはなくて、知ったときには大声を上げてしまったものだ。


「なに、私の仕事など大した事はないよ。文官の方が大変だろう」

『でも貴方は、この国の平和を守っているから、それって大変な事よ』

「この国の民はみな穏やかで明るくて心優しい。私なぞ居なくても平和は崩れない」


確かに、シンドリアの人々はみんな明るくて優しくしてくれる。流石は王様が作った国だと、幾度となく感じたことがある。
だがスパルトスの考えはちょっと、消極的すぎやしないだろうか。


『スパルトスだってもっと…こう、明るくなりなよ!もう出たんだし、祖国の教えを守ること無いんでしょ?』

「それはそうなのだが……どうも気になってな」

『真面目すぎる!真面目すぎるよスパルトスは!』

「名前はピスティと同じ事を言うな」

『ピスティ様と?』

「あぁ。お前たちはそっくりだ。きっと仲良くなれるだろう」

『ふふ、それは嬉しいな』


そっとスパルトスを見ると、一瞬目が合ったがすぐに反らされた。やっぱり祖国の教えを捨てれないらしい。
無理矢理破らせる気は無いし、そういう慎ましやかなところがスパルトスの良いところだとは分かっている。
だけど私は、しっかりと顔を見て話がしたい。


『ねぇ、スパルトス』

「なんだ?」

『私の目を見て話して?』


動揺で少し揺れたスパルトスとまた目があったけれど、またすぐに反らされた。


「な、なにを……おまえも知っているだろう、サザンの教えを」

『うん、知ってるよ。知ってるけど、知ってるから……スパルトスの目が、見たい』

「名前…?」


目が、合う。
今度は反らされる事は無かった。動揺で目が揺れているのがよく分かる。


『ねぇ、家族と許嫁なら目を見ても平気なんでしょ?』

「そう、だが……」

『なら、私をスパルトスのお嫁さんにして、家族にしてください』


目を見たままにっこりと笑って手を差し出した。おずおずと、握られる手は力なく頼りない。
それでも握ってくれたと言うことは、期待しても良さそうだ。



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相互サイトのイオから誕生日プレゼントに頂きましたー!!!

スパルトスさんウオアアアアアアア素敵すぎて…!!!ずっとみるよ!/////







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