くんくん。外から吹き込む爽やかな風に文官服を煽られたわたしは、そんな事もお構いなしに辺りの匂いを嗅いだ。うんうん、白羊塔はやっぱり墨と羊皮紙の香り。わたしは文官達の中でも下っぱの方なのだが、いつものごとくわたしが抜け出すのを止められた者はいなかった。してやったり! 五感が非常に鋭いファナリス程ではないが、鼻をあちこちに向けながらわたしは王宮の廊下を走る、走る。あっ、武官のお兄さんぶつかってごめん!あと汗くさいよ!と親切なわたしが忠告してあげたので彼は嬉しそうな顔(※名前はそう思っている)をしていた。わたしっていい子! しばらくキョロキョロとあちこちを見回しながら走っていたわたし。……あっ、見つけた!!目標ターゲットを捕捉しました、今から突撃します!!! 「…―ジャァアアアアファァァアアアアアルさぁぁあああああああんっ!!!」 「げっ…名前?!!」 ふわふわ揺れるクーフィーヤに特徴的な白い髪、それから可愛いそばかす姿が目に入った瞬間、わたしはその人ジャーファルさんに向けて突進した。目を見開き、まるでうげぇ、と言うような視線を向ける彼に全く気付かない。そしてわたしは、ジャーファルさんの胸板にすり寄り匂いを嗅ぎながら息継ぎナシでこう言った。 「ああジャーファルさん今日もいい匂いです違う今日もいい無臭具合ですねたまらないですずっとこの態勢でもいいですかいいですよなんて優しすぎます流石わたしのジャーファルさん!」 「………名前、勘弁してください…」 手に持った巻き物を取り落としそうなくらいに憔悴しているかの様なジャーファルさんの顔。やだジャーファルさん、わたしへのドキドキで疲れちゃったのかな?と彼の官服の匂いをひたすら嗅ぎながら考えていたら、べりっと剥がされてしまった。 えー、わたしからジャーファルさんへの愛の囁きで分かったと思うけど、わたしはいわゆる匂いフェチというものである。好きな匂いは無臭だよ!きゃるるん!と廊下でそそくさと横を通り過ぎようとする知り合いの文官に自己紹介してあげたら凄いスピードで走り去ってしまった。急ぎの用事があったみたい! 「で、仕事はどうしたんですか、名前」 「ジャーファルさん禁断症状が出たので抜けてきました!!」 「〜〜〜ッ……今すぐ執務室に戻りなさい!!!!!!!」 ベリーキュートスマイルで言ったのに怒られちゃった。だって、とわたしは呟く。ぶつぶつ。一日五回はジャーファルさんの無臭を嗅がないとわたし死んじゃう。そう、死んドリア。匂いフェチなわたしは比較的いい匂いのする文官の仕事を選んだだけだもん! だから好きな匂いから嫌いな匂いにまで包まれるシンドリア王宮で、上司のジャーファルさんはわたしの唯一の癒しなのだ。常に匂いがしないとかカッコいい。けどその大好きなジャーファルさんに行けと言われたので、仕方なくわたしはスゴスゴと執務室に帰る事にした。いい子のわたしは残念だけど素直に引っ込むのだ。 「………うぅ…癒しタイムが…今度はマスルール様を当たろう……」 「何ですって?」 「?、どうしたんですか?ジャーファルさん」 「ちょっと待ってください、今マスルールと聞こえましたが…」 少し焦ったように聞き返してくるジャーファルさん。本当にどうしたのかな?ジャーファルさんが帰れって言ったから二番目にいい匂いなマスルール様の所に行こうとしたのに。彼は森の匂いがしてジャーファルさんには及ばないけどいい匂いだ。うん。 「……分かりました、三分だけですから、私の匂いでも何でも嗅ぎなさい。そうしたらちゃんと執務をこなしてくださいね?」 「ジャ、ジャーファルさん………!!!やっぱり大好きですーーー!!!」 本日の周りにいた文官の日誌から抜粋、頬を染めながらそう言ったジャーファルさんは、どこからどう見ても名前とバカップルでした。さっさとくっついてくれないとこれ毎日はキツいです、彼女欲しい。 だけれど次の日も平和に同じ出来事がありましたとさ。ちゃんちゃん! ーーーーーーーー さあや遅れたけど相互記念ジャーファルさん夢でした!!!本当に相互ありがとー!!!//// 手直しとかはいつでも受け付けるからね!低クオリティーでお馴染みのわたしです、わたしです。またついったでも仲良くしてね!よろしくゥ!!! もちづきこ |