※現パロ





バタン。自室の扉を閉めて、中に入りカーテンを開ける。電気も点けないでそのままベッドにダイブすると、空には薄く青々と輝く月があった。
あー、腹いっぱいだ。さっきまでアニス母さんの作った夕飯をたらふく食べたお腹が、もう食べられないとSOS信号を出している。


「今日はまた一段と寒ぃなあ…」


ぽつり。暖房を効かせていないため、室内の気温はこの冬一番の寒さになるでしょう。
などとまるで天気予報を伝えるニュースキャスターのような口調で呟いてみる。予想外に自分で面白くなってきて、ぷふっ、と口の端から吐息が洩れた。俺何でこんな変な奴みたいになってんだよ、と自問自答してみるが、面白さには勝てないらしい。俺は腹を抱えてしばらく笑い続けていた。

五分程経ったとき、突然がらり、という音と共に隣家に面したベランダから誰かが入ってくる。だが俺は慣れているから驚かない。たった今入って来た人物の正体は、幼馴染みの苗字名前。
家が隣同士でお互いの部屋のベランダが向かい合っているという何ともベターな幼馴染みだ。しかも名前は昔から昼夜構わず俺の部屋に押し掛けた。コイツが押し掛けるためにいつも部屋のベランダの鍵を開けさせられているのはこの横暴さ故なのか、まるでかかあ天下だ。とまた可笑しくなった。



「アリババやっほー。…って寒っ!何で暖房点けてないの?!」

「腹いっぱいで動くの面倒臭かったから」

「あり得ない…私凍死しちゃうから暖房点けるよ!」

「…おー」


部屋に入ってくるなり文句を言い始めた名前は、自分の部屋に居るかのように暖房を点け、そこらへんにどかっと腰を下ろした。さすが名前、乱暴だなー…。と、ボソッと言ってみただけなのに、目ざといコイツはそれを聞き逃す筈もなく、眉を少し吊り上げながらこちらへ攻撃を仕掛けてきた。


「とりゃー、こそぐりの刑だ」

「うははは、はははっ!ギブギブもう無理、やめろって、すいません!はははは!」

「よし、まあ許してあげましょう」


俺の脇をこそぐり続けていた手を止めて、ベッドに寝転がる俺の横、つまり床に腰を再び下ろした。その拍子に名前の着ていた暖かそうなパステルカラーのパジャマの裾が揺れる。なんかコイツ、女っぽくなったなあ。不意に、思った。

昔は俺と隣同士の家ということもあり、毎日のように近所を探険してカシムたちとも一緒に悪戯をしていたようなやんちゃなやつだった。だけど、高校生になった今となっては、そのやんちゃさは身を潜めて俺の部屋に侵入したりするぐらいにまで収まった。あのピンポンダッシュで一番早く逃げていた名前はどこに。
そんなことをぼーっと考えながら名前に適当に応対していると、月明かりに照らされたコイツの顔が綺麗に見えて、思わず目を擦ってしまった。なんだこれ。一方ぺらぺらと、「もー古典の山内がさー」とか話していた名前はそれを眠いのかと勘違いしたのか、眠いの?と聞いてきた。


「アリババ眠いならもう寝たら?」

「そうするかなー…」


何時もはあまりしないような優しさを含んだ表情をした名前を見ながら、暖房が効いてきたのか確かに眠くなってきた。あと腹いっぱいだからか、ほら、腹の皮が張ったら面の皮がたるむとか言うじゃん。
そうこうしている間に眠い俺をくすくす笑いながら見ていたコイツを見てみる。あ、なんか名前がちょっと可愛く見えた。なんだ俺気持ち悪い。じゃあアリババ寝たらカーテン引いて部屋戻るね、そう呟いた名前の声を聞いた後に瞼が完全に降りる。


わかった。ふわふわした意識の中でそうとだけ返事をする。
完全に意識がまどろみに沈むよりも先に、時間も経たないうちに名前が立ち上がる気配がした。もう帰るんだな、なんて考えていたら、その気配はベランダに向かうどころか何故か俺の近くにやってきた。きし、とベッドのスプリングが軋む音。ぼやける意識の中で疑問に思っていたら名前が聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟いた。



「―………この鈍感、バカババ」



その言葉と共に、ちゅ、と頬に柔らかな感触が一瞬触れて離れて行った。その後直ぐに去っていったアイツの気配を余所に、俺は一気に目が覚めてしまって、手のひらで温かな感触が触れていった頬を押さえているしかなかった。




「明日寝不足になったら絶対アイツの所為だ…」





ー ー ー ー ー

カロ相互ありがとうー!相互記念夢書けました!リクエストありがとうう…ババくんがもう誰これ状態だけど受け取ってやって下さい!

また気に入らなかったら書き直し、手直し受け付けるから好きに言ってね。本当に相互ありがとう!

       もちづきこ






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