「うーえまーつくんっ!」 「名前ちゃん、おはよう!」 私は息をすうっと吸い込み、元気良く植松くんを呼んだ。今日は暑すぎず、涼しすぎずのいいお天気。遠くの方の空にはおおきな入道雲がフワリと浮かんでいて、絶好のお出掛け日和だ。 団地に住む苗字のアルファベットにUが入る、植松くんを含む三人組をスリーUと知り合いは呼んでいる。その三人組、プラス桃山プレデターという彼らの所属するサッカーチームのメンバーと今日はプールに行く予定なのだ。 楽しみ過ぎて早く着いてしまった私が一番、次に植松くんたち、次にエリカちゃんと翔くんと玲華ちゃん、次に三つ子くんたちの到着順だ。みんなプールバッグを各々手にぶら下げて、どこか浮かれた雰囲気を放っている。 「じゃあ、切符を買おう!!」 「翔くんうるさいでー!何もプールは逃げへんから早よ買おー」 「私もう買ったよー」 「僕たちも」 「もー!一番遅いのウチらやん!早よ!」 「はっ、はいぃ!」 エリカちゃんと翔くんの夫婦漫才(みたいなの)には、つい笑ってしまった。切符を買いながらも喋るのを止めない二人に、さすがの三つ子くんたちも大笑い。二人とも仲良いなあ。 そして電車に乗り込み、私はわくわくした気持ちでエリカちゃんと玲華ちゃんと一緒にはしゃぐ。水着どんなんにしたん?私は少し間が空くスカートのやつ!という風に水着談義に花を咲かせている間に、ちらりと植松くんの方を見れば、内村くんや浮島くんとお菓子の争奪戦をしていた。 何をしててもかっこいいなあ、と思いながら、気付かれないように私の心のシャッターで植松くんの笑顔をそっと収める。うん、いい一日になりそう。 − − − ようやくプールに到着した私たち。ここは遊園地にあるプールなので、流れるプールやウォータースライダーなどなんでもござれだ。皆キラキラとした表情でそれを見ると、女子組と男子組で素早くそれぞれの更衣室に向かい、出来るだけ早く着替える。玲華ちゃんもエリカちゃんもかわいい…!三人で水着を褒めちぎった後、更衣室を出ていくと、もう男子組が待っていた。 「お待たせー!見てみ!玲華ちゃんも名前ちゃんもめっちゃ可愛ええでー!もちろん、ウチもな」 「あっ、エリカちゃん!確かに玲華ちゃんも名前ちゃんもかわいいね!」 「へぇ、いいんじゃねーの?」 「腹チラっていいですねえ…」 「竜持…オッサンみてえ…」 「まあ三つ子は置いといてやなー、スリーUは何か言うことないん?」 「僕もいいと思う」 エリカちゃんがにやにやとした顔で、こっちをさり気なく見ながら植松くんたちに聞いている。わざとだなエリカちゃん、ホントやめてください。 植松くんの反応が怖くて自然と視線を別へとやってしまう。プールの水に太陽の光が反射して綺麗だなあ、そう気を紛らわすようにしていると、いきなり私の右腕が掴まれる。 …何と、私の腕を掴んだのは植松くんだった。その事に驚いている間に彼は走りだした。もちろん私の腕はしっかりと握ったまま、だ。爽やかな夏の風を切り、彼の表情がよく見えないまま、さっきの場所から遠い流れるプールへと腕を掴まれたままで飛び込んだ。正確には飛び込まれた、の方が正しい。 「…っぷは!」 「名前ちゃん、いきなりごめん」 「びっくりしたけど大丈夫だよ!植松くんどうしたの?」 「………」 「植松くん?」 何も言わない植松くんにどうしたのだろうかと思ってしまう。はっ、まさか水着姿が見るに堪えないから皆から遠くに…?頭の中をくるくると回転する思考は、どんどん悪い方へと考えてしまう。 むっつりと黙りこんだままの彼は、ぽつり、ポツリと私の方へと目線を上げて話し始めた。流れるプールなので、水流に漂うままにしながら喉から単語を引っ張りだした。 「あの、さ」 「うん」 「名前ちゃんがさ」 「…うん」 「着替えて出てきたとき、あまりに可愛くて、」 「……うん」 「…ウキとか、他の奴らに見せたくないな、って思っちゃったんだ」 「…!」 彼が発した言葉に耳を疑う。ウソ、植松くんがそんな事を思ってくれてるなんて。冗談じゃないよね?プールは涼しい筈なのに、顔は熱い。なにこれおかしい。 思わず瞠目した私を見た植松くんは、私が変な事を言ったからびっくりしたのだと思ったのか「え、あ、いや変な事言ってごめん!ちょっと一泳ぎしてくるよ!じゃあ!」とか何とか言って、オロオロしながら潜って行ってしまった。 「逃げるなんてずるいよ、植松くん」 私は一人取り残された水面でそっと呟いた後、水を蹴って煌めく水中へと潜り込んだ。 −−−−−−−−−− くさもちちゃん相互ありがとー!相互記念夢植松くん完成したよ!!こんな低クオリティーでよければ貰ってやって下さいな! 手直しとか書き直せやオラアはいつでも受け付けるからね、これからもよろしく!!! もちづきこ |