梅雨に入って直ぐ、梅雨の休日みたいに綺麗に晴れた土曜日に、私は降矢家のリビングにいた。やっぱりどこに行ってもじめじめして暑い。

網戸になっているものの時折風が吹くくらいで、私を涼ませてくれる事はない。この三つ子の家、いかにもお金持ってます!って感じの家具がバンバンある癖に冷房をつけていないのも一つの要因となって、私をダラダラさせていた。


(ほら、庶民私みたいな庶民じゃなくてまだお金があるんだからさ!使わないと駄目じゃん降矢くん!)



……そんな事を思ってもテレパスでも何でもないから伝わるわけがない。そうだ、暇だしここで捕捉。今日はちょいと私の家族が用事で家にいないので、降矢宅に遊びに来ていたのだ。



「あー竜持くんお茶淹れに行ったし暇ー……ん?これは!アイパッドじゃん!誰の」



凰壮くん、虎太くんはそれぞれ用事があるらしく、家に来たら竜持くんだけだった。竜持くん、一人でいつも通りぺらぺら喋ってお茶淹れに行ったなあ、と思いながら高そうなソファーに座り机をふと見た。すると、そこには夢の機械、アイパッドが!


さすが金持ちは違う、誰のアイパッドかと机からそれを持ち上げ、くるくると見てみる。あ、裏にシールが貼ってある。なになに、「降矢竜持」…あいつか!パッツンめ!ボンボンあのヤロー小学生の癖にこんな高いもの要りません!そしてそのアイパッドを憎悪の目で見つめる。



「どうしてくれようか…あ!いいこと考えた!」



私天才かもしれない、三つ子の悪魔と呼ばれている彼らと同い年だけど私の方が上じゃないか。そう自画自賛をしつつ、準備に取り掛かる。やり方は簡単だ。

チューペットの要領でアイパッドを膝折りするだけ!…何ていい案なんだろうか、そうと決まれば早速行動。私はアイパッドを両手でしっかりと持ち、上で構えて振り下ろすだけ!と、思った所で寒気を感じて振り返る。すると、竜持くんが口元に笑みを称えながら立っていた。



「名前さん…?」

「あは、あはは…竜持ぐぶっ」



竜持くんは私が答える前に床にさっとコップの乗ったトレーを置き、スタスタと歩いてきて私の手からさっとアイパッドを奪い取った。そして、わたしの頭をアイパッドで力一杯叩いた。



「…ったあああぁぁぁぁ!竜持くん何すんの!」

「それはこっちのセリフですよ、僕のアイパッドに何しようとしてたんですか」

「…チューペットみたいに膝折りかな!」

「…」



竜持くんは無言でもう一発アイパッド叩きを御見舞いしてきた。仕返しのチャンスは何かないか…はっ!またしても天才的な案を思い付いてしまった私は直ぐに行動に移した。

説教をしながら余所を向く竜持くんの手からアイパッドを不意討ちで奪い取り、彼の背後に回り込んで、こそぐった。竜持くんはくすぐりに弱いというのをこの前虎太くんから聞いたのだが本当だ。こそぐられて笑っている彼の顔を、アイパッドで撮影!…これでフィニッシュだ。



「…っはぁ、はぁ、名前さん、よくも、撮ってくれましたね…」

「っあははははは!面白い!仕返し大成功ー!」

「ふうん…ならばこちらにも手があります、からっ」



息を切らしながら怖い顔で私を睨んでいた竜持くんは、私の手からアイパッドを奪い返すと、もう片方の手で私の腕を掴んだ。そして、そのまま私の唇に柔らかい物が当たり、パシャっというシャッター音が…え?

驚いて前を見ると、竜持くんの長い睫毛とどうだ、と言うように細まった赤い瞳があった。え、まさか、え、私竜持くんとキ、キスして。混乱しているうちに唇は離されて、竜持くんが勝ち誇った声色で話し掛けてきた。



「これが僕の仕返しですから。大成功、ですね?」



そう笑った竜持くんにどきりとしてしまった。それよりも、ファーストキスが、竜持くんに、奪われた。火照ってくる頬を手で押さえると、もう一回竜持くんの唇が私のそれに当たった。その時、廊下の方から物が落ちる音が。

そちらをさっと向いてみると、そこには練習帰りであろう凰壮くんがボールの入ったネットを落としていた。わなわなと体を震えさせたセンター分けの彼は、竜持のスケベ野郎ー!と叫びながら自室に上がって行った。頬の火照りは、まだ引かない。






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この夢は相互サイト、「Pessimism」に相互記念で捧げました!

たかちゃんこんな駄文でごめんね!手直しもばち恋なのでいつでも言って!これからもよろしくねー!
       もちづきこ 





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