拍手お礼文(約束1) | ナノ

※みだらはハピエンらぶ!
※驚くほど短い上に尻切れだよ
※何番s…
※え、こんなんで続くの?
それでも大丈夫でしたら、どうぞ

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「俺が死んだら手前はどうする」

「そうだね、一緒に死んであげるよ」



平和島静雄と云う化け物は、折原臨也にとって、親友でも仲間でも恋人でもなかった。

だから、臨也が静雄にそんな事を訊かれてそう答えるのは、気紛れにしてもきっと適切ではなかったのだろう。
…けれど、折原臨也と平和島静雄はそんな友情だとか愛情だとか親愛だとか、美しいばかりの一言では表せられない程度には、切っても切れない。確かに特別な関係だった。





平和島静雄が死んだ。


そんな馬鹿馬鹿しい噂がまことしやかに池袋を駆け巡ったのは、梅雨の明けた初夏だった。夏の東京に雪が降るよりも有り得ない事だ。
刺しても撃っても轢かれても死ななかったシズちゃんが。この俺が何度陥れて殺そうとしてもびくともしなかったシズちゃんが。俺の知らない所で、そんな簡単に死んでしまうわけがない。

噂を微塵も信用しないまま臨也が新羅の元を訪れたのは、その噂が街に浸透して1週間が経った頃だった。
当然、新羅からは「死んだなんて何の冗談だい?ああ、物理的にじゃなくて、君に告白でもされた事による精神的なショック死かな?」なんて、いつもの軽口が出てすぐに追い返されるものだとばかり思っていたのに。
けれども、返ってきた第一声は、「君にしては情報が遅いね」と言う、何のひねりも面白味もないものだった。

「それについては間違いないよ。折原臨也が心から嫌い、愛した、化け物で喧嘩人形の平和島静雄は、確かにこの世から消えた。死んだんだよ。もうどこにも居ない。残念だけど諦めなよ。え?証拠?そんなものは私自身だよ。僕がそれを確認をしたんだから。間違いはないだろう?」
新羅は、軽い擦り傷を手当てしている時のような気軽さで、全く何でもない事のようにそう告げた。

実際、新羅には池袋に来る途中、気紛れで触れた野良猫に引っかかれた傷を手当てしてもらっているのだけど…。
シズちゃんの噂の真偽を確かめるためだけにわざわざ池袋に、新羅の所に来た、だなんて勘違いをされるのはごめんだったので、新羅には念を押してそう伝えたのだけど。「君が気紛れに猫を触ろうとするのも、夏の東京に雪が降るくらいには珍しいことだよね」と苦笑をされた。失礼な。俺だって、たまには小動物を愛でたくなる事もある。

それにしても、どこから突っ込んでいいのやら。
俺がシズちゃんを「心から嫌い」なのは周知の事実だとしても、「愛した」だなんて。表現が陳腐すぎて虫唾が走る。
新羅は俺の一番の理解者で、どれだけあの化け物を疎ましく思い殺したいと思っていたのか、その身をもって知っているはずなのに。

ああ、そうか、これは新羅なりの冗談だったのか。まったく相変わらず性質が悪い。そんな新羅に付き合ってあげられるのは、今も昔も俺くらいだよね。ほんと仕様がないなぁ。
…で?どっからどこまで冗談だったわけ?
そのジョーク面白くないよ、と、いらいらし始めた俺に、新羅は真剣な顔でもう一度告げた。


「残念だけど、ジョークじゃないんだよ折原くん。
君が心から嫌い、愛した、化け物で喧嘩人形の平和島静雄は、死んだんだ」




20110424

つづく