【馬鹿な子】1 | ナノ

※派生キャラで日々デリです。ちょっとモブも出ます。






デリックは静雄と臨也その派生たちの中で、誰よりも奔放な性格だった。
無邪気を具現化したようなサイケすらも閉口する、明け透けな言動。
だから、自身の欲望を隠す事もなく
「なぁ、静雄やろう」
今日もセックスの相手を探して明るくベッドへと誘う。

「うるせぇな、臨也にでも言え」

聞きなれたセリフに、苦言を呈す事をとうに諦めた静雄は、面倒事を臨也に押し付けた。
デリックはそのまま方向を変えて、大きなデスクの前でパソコンに向かう臨也に声をかける。

「臨也〜、やろうぜ?」

「はいはいまた今度ね」

デリックの方へ視線を寄こす事もなく、臨也は片手をひらひらと振っておざなりな返事を返した。

「津軽…」
やられる方じゃなくてやる方でもいいか…と、しょんぼりしながら津軽を見やるが、デリックから隠すように津軽の前に立ち塞がったサイケに邪魔をされる。

「津軽は駄目!デリビッチは日々也とでもやってればいいじゃん」
津軽をぎゅうぎゅう抱き締めながら、サイケが冷たい目でデリックを睨む。

「日々也はやだ。じゃぁサイケでいいよ。やろ?」
「やだってば。俺はデリックみたいな淫乱じゃなくて、津軽みたいな口数少ない方が好みなの」
「ったく、いいじゃねぇか減るもんじゃないし」

日々也を誘うのは気が乗らないため、デリックはいつも日々也以外の誰かに声をかける。
今日も良い返事をもらえなかった…と、溜息を吐こうとすると、控え目に声がかけられた。

「…あの、デリックさん。貴方の嗜好にあまり口出しはしたくないのですが…。誰とでもその…セッ…クスを、するのは良くないと思います」

デリックの苦手な日々也だ。

嫌な奴に捕まり、デリックの顔があからさまに顰められる。

「うるせぇな童貞のくせに!俺が誰と寝ようがてめぇにゃ関係ねぇだろ」
「それは…そうですけど。でも、嫌なんです」

日々也はデリックが誰とでも寝ようとするのが気に食わないらしい。
デリックが夜の相手を探していると、必ず現れて邪魔をする。
だから、デリックは日々也が苦手だったし他人の性生活なんて放っておけよ、と思っていた。

「なんでテメェが嫌がるんだよ」
「それは、私があなたを好きだからです」

間髪おかずに、日々也はきっぱりと、まっすぐデリックの瞳を見つめて告げる。

「…日々也」
 そこだ
「はい」
 そこが、デリックが日々也を苦手な
「なんか、重い」
 一番の理由なのだ。

「…すみません」

傷ついたような顔をして目を伏せる日々也をそれ以上見たくなくて、デリックは玄関に向かった。


「…ねぇ、なんで日々也じゃ駄目なの?」

玄関に続く廊下には、腕を組んで上半身を壁にもたれかからせた六臂がいた。

「だってなんか、あいつ…重いから」
「そうゆうものでしょ恋なんて」
「やだよ俺は。追いかけられるより追いかけてる方が楽だ」

恋なんて重い。好きなんてうざい。
デリックは、軽い付き合いで、楽しく気持ちよくなりたいだけだ。

「なぁ、六臂…」
「なに?」
「やろうぜ?」
「…いつもみたいに町で遊んでおいでよ」
「ちぇー。ガードかてぇなぁ」

後腐れなく付き合ってくれたらいいのに。そう、ぶつぶつ言うデリックを後目に、
六臂はため息をついて顎で外へ続くドアを示した。




「ねぇ、そこのお兄さん。モデルやらない?」

新宿をぶらぶらと歩いていると、スーツを着た男に声をかけられた。

「もでる?」
「簡単な仕事だよ。カメラに向かって笑ってたらそれでおしまい。君なら需要あるし…」
「需要?」
大柄な自分に、果たしてどんな需要があるのだろうか。

デリックが首をかしげていると、男は馴れ馴れしくデリックの腰に腕を回し、狭い路地へと誘導していく。

「まぁまぁ、すぐすむから!人助けだと思って頼むよ!」
「一時間ぐらいで終わるなら…」

長時間戻らないと臨也に怒られてしまうだろうが、一時間ぐらいなら問題はないだろう。それに、人助けできるなら静雄も褒めてくれるに違いない…。
そう思ってデリックが頷くと、「ありがとう!それで十分だよ!!」と、男は大げさに喜んだ。







20110603

つづく