シズオのおもちゃ!1 | ナノ

※「アスタ○ッテ〜」のパロです。が、ほとんど原形をとどめていません。
シズちゃんが夢魔族(インキュバス)の王子で、臨也が人間です。





どこか、懐かしい匂いを嗅いだ気がした。

目の前が突然、暗闇に包まれる。
ぐにゃりぐにゃりと脳が揺さぶられ、体がふわりと浮くような感覚を味わう。
目を開けると、小高い丘の上に鎮座する視界にとらえきれない程の樹枝を掲げる大樹の根元に座っていた。
眼前に広がるのはゴミゴミとした都会の街角とは対極の、絵本のように美しい世界。
見渡す限りの草原と不自然なほどに調和の取れた森。遠くには箱庭のような中世のヨーロッパを思わせる、のどかな街並が広がっている。

知らず、へえ…と、感嘆のため息が漏れた。確かに間違いなく、自分はつい先ほどまで入学式から自宅への帰路を歩いていたはずだった。

まるで、アリスのようだと呑気に考える。
ウサギを追いかけて落ちた穴から不思議な国に迷いこんだ少女。世にも奇妙な体験をして気が付くと、少女は木の根元で昼寝をしていただけだった。
自分は少女ではないけれど、起きたら自分の部屋のベッドの上で、この体験は夢だったのかとがっかりするのだろうか。

それならさっさと起きたいな、と思う。
現実の出来事じゃないなら、それがどれだけ特異な夢でも見るだけ時間の無駄だ。


異世界に迷い込んだ少年、折原臨也は、非現実に憧れる至ってどこにでもいる高校生だった。
あくまで、第三者から見て、の評価になるが。
眉目秀麗、頭脳明晰、品行も良くて人望も厚い。いっそ胡散臭い程の評判が、臨也と関わった一般的な人間の抱く印象だった。
そんな、人の良く単純な周囲からのレッテルを当然と受け止めて、心の中では画一的な世間を蔑み退屈な毎日からの離脱を夢見る。外見とはかけ離れた鬱屈した内面もまた臨也の実であった。


さて、ここは自分の望む非日常なのか…。
臨也が小さな期待を納めるように大きく息を吸い込んだ時、背後から凛とした声が降ってきた。

「手前は誰だ!ここで何をしている!」

景色と思考に意識を奪われていたため、不意の問い掛けに驚いて振り返る。
するとそこには、ハニーブロンドの髪をなびかせ高貴な衣装を纏った少年が、お伽話のような白亜の城を背に仁王立ちで臨也を睨んでいた。






20110517

続くのかどうか微妙ですみません;;たぶんもう少しだけ続きます。続かなかったらごめんなさい…