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満月の夜だった。
真っ黒な空にぽつんとまあるいまあるい月が浮いてて。
何処にいても見えるのにこの世界に月は一つしかない。
けれど、あの日の月とは全く違うものにしか見えなくて。

―ねぇ、そらにむかってとんだら月までとどくかな?

精一杯背伸びをして月に手を伸ばす少女。
その顔はとても楽しそうで。
そして、結晶の中で眠りについた彼女は月明かりでとても綺麗だった。
彼女が封印されると知ったから、あの屋敷から連れ出した。
なのに、封印を阻止することはできなくて。
その後のことはよく覚えていない。

でも、赤く染まった俺が倒れていた事だけははっきりと覚えている。
―あぁそうか…。
あの日の月は、赤かったんだ。

ひとつ舌打ちをして月を見上げる。
あぁ、月はこんなに綺麗だというのに。
遠くから、嫌な気配が2つ近づいてくる。
彼女を封印した兎野郎。
大方、俺を捕まえる為だろう。
おあいにくさま、俺はお前らには捕まってやらないさ。
すう、と猫の姿になると暗闇に紛れるように消えた。

(後戻りなどできないんだ)
(これが正しい選択なんだから)



ルドベキア






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