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こんな時、オカルト好きな親友や能天気な幼馴染ならどう対処するんだろうか。
こういう事になるのなら私もオカルト好きになるべきだったかなあ、なんて頭の片隅で考えてしまうほどこの状況は異常だった。
いや、ひょっとしたら異常なのは状況じゃなくて私の頭……「聞いてるかい?捜索者」ではなかったみたいだ。
慌てて前を見ると左耳の黒い兎がじとりとした目でこちらを見ていた。
そういえばこの兎はずっとなにかを説明していたのだった。
大半は頭に入ってないけれどどうにか頭をフル回転させて思い出す。
「あ…あの絵からアリスが逃げちゃったからとっ捕まえて封印するんでしたっけ…」
「…微妙に違うけどまあそういうことだよ」
左耳が黒い兎はそう言って腕を組んだ。
…兎なのに腕組むんだ……
「絵から逃げたのはアリスではなくて、正確にはアリスの魂だよ」
封印の扉が開いてしまったからねと言いながら私の足元のクッションに座った。
それってもしかして
「私たちが絵の前でジャンプしたから…?」
そうとしか思えなかった。「まぁ直接の原因はそうだね」
左耳が黒い兎が答える。
「でも遅かれ早かれアリスの封印は解けていたよ」
「どういうことなの?」
「ここ最近でアリスの封印が急激に弱っていたのさ
あと少し弱まったらアリスが自力で出られるくらいにね」
「どうしてそんなに封印が弱まって…?」
「さてね
 けど封印を誰が弱めていたのか大体見当はつくよ」
「…それは」
誰なの、と聞こうとしたけれど
「エリル、猫の匂い」という言葉に遮られた。
「…近くにいるのだろうね」
左耳が黒い兎…エリルはそう呟くと窓を開けた。
「じゃあまた会おう捜索者」
そう聞こえた次の瞬間、2羽の兎は暗闇に溶けていった。

「目覚めちゃった…」
もう今日は眠れないなあ…とため息をついてテーブルに置いた読みかけの小説に手を伸ばした。