ふわふわと夢の中に落ちかけていた。心地よい眠気にこのまま寝てしまおうとゆっくり目を閉じた。 ふと、部屋の扉が開く音がして閉じたばかりの目を少し開いたが立ち上がるのも面倒だと思ってまた目を閉じた。 「なまえ」 わたしの名前を呼ぶ声がしたと思うと、頬に凍えるような冷たさが走った。こんな手をしているのは彼しかいない、と目を開けると立っていたのはやっぱりクザンだった。 「あらら起きちゃったじゃないの」 「さすがに起きるよ」 「起こすつもりはなかったが」 彼はそう言ったけど絶対起こすつもりだった。でなければ私の部屋なんか来ないでそのまま眠りについてしまうはずだから。 「なぁ、なまえ」 「ん、どうしたの?」 「布団に入れてくれねぇか」 「そんなことお願いしなくてもいいのに」 私がすこし笑うと彼は頭を掻きながら布団に潜りこんできた。余裕をこいていた私も目の前に彼の顔がくると少し恥ずかしくなってさっきよりも深く布団を掛けた。 彼はずいっと顔を近付けてきて思わず目を閉じた。 「キスしちまうぞ」 耳元で甘やかすみたいな声でそういうと私の返事も聞かずに唇を重ねてきた。わたしは目を閉じてそれに答えた。私がディープキスは苦手だと言ったら彼はしなくなった。舌を絡ませなくたってわたしは十二分に彼を感じることができると思うのだ。 「かわいいな、なまえ」 「そんなこと言ってくれるのクザンだけだよ」 そういうと彼は目を細めて柔らかく笑った。そしてまたキスをした。すると今度は私を後ろからきつく抱き締めてきた。わたしは身体中に鳥肌がたつのを感じたがそれは嫌でたったのではなく生理的なものだった。 「寒くて寝れないかも」 「寝ればいいじゃない」 「……もう。」 わたしはすこし寒かったけれど、彼が隣にいる暖かい安心感には代えられないと思ってまた目を閉じた。 寝顔に秘密を (やさしいやさしいきす) |