「マルコさん」
「………」
「マルコさん」
「………」
「マルコさん」
「………」
「マルコさん」
「……ああ、もううるせえよい!!!
世話をしろとは言われたが
四六時中後をついてまわられる筋合いはないのだ。
「マルコさん、聞いてほしいんです」
小さな手が俺の服の裾を掴む。
赤い髪の間から大きな目がこっちを覗き込む。
「…なんだよい」
振り返り、真っ直ぐその視線を返した。
「……わたし、初めてだったんです。」
さっきまで目を合わせていた視線をさげ、小さな声でそういったのだ。
「…………よい?」
身体中の毛穴から嫌な汗が一瞬で滲んだような気がした。
初めてっていったいどの初めてを指すのだろうか。
昨日の夜のことだろうか、なにも覚えていないせいで、何も言い返すことができない。
「……でも、よかったです。マルコさんに会えて。」
意味深な彼女の言葉。
「そ、そうかよい。」
思わず言葉もつまる。
「じゃあ、わたし皆さんに挨拶してきます」
満面の笑顔と軽い足取りの彼女を
見送る俺に余裕があっただらうか。
豆ダヌキ笑いました。
(知らねーもんは知らねえよい!)