3.揺れる瞳
(気にしてない、ふり)






失恋したのに、諦めきれない想い。
苦しいはずの恋をまだ続ける私は往生際悪いと思う。

それも全部、佐伯君のせい。

だって思わせ振りばかりで期待してしまうから…




「…」
「あ、いたいた」
「!佐伯君!?」
「昨日は君が消えちゃうものだから、何も言えなかったし」
「え…と?」
「わざわざ、追いかけてまでお礼なんて律義なんだね」
「いえいえ!なんか言わないのもスッキリしないし!」
「でも嬉しかった」


たった一言、言われただけでときめいた私は単純なんだなって実感しました。




「あ、ここいいかな?」
「う、うん!」




佐伯君が私の隣に!!
天にも昇る思いだ!



「佐伯君は、私のこと知ってたんだね」
「知ってるさ。体育祭でファインプレイした反動で派手に怪我した子だからね」
「…それは嫌に知られたなー…」


まさか、見られていたなんて恥ずかしいよ!
公衆?の目が痛かった…




「あの時に見た君の達成感に満ちた顔が忘れられないよ」
「何それ…///」
「君は、君が思ってるほど目立たない存在じゃない。俺もちゃんと知ってるんだから」
「ありがと……なんか照れるかな」
「自信持って」




佐伯君の真剣な眼差しに釘付けになってると、ハッとなり我に帰った。
見つめ合ってるみたいだったから途中で意識したら恥ずかしくなった。


私、自分に自信ないって周りからわかるくらいだったんだ。




「さて、そろそろ俺は戻るよ」
「うんっあの、ありがとう!」
「はは、二度目だよ?」



バイバイと手を振る佐伯君を見送る。



彼の姿が見えなくなってもその先を見てなんだか切なくなった。


だめ、本気になっちゃいけないのに。

だけど……そうだったらいいなと思う。




「私は失恋したんだから…離れなきゃ、迷惑だよ」



誰に言うわけでもないけど、ぽつりと呟く。





「でもやっぱり―――」





諦めきれない。






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