表情






突然でした。


「あ、リコ。明日ちょい付き合えや。答えは聞いてへん」


そう言われて私はただ呆然とするしかなかったわけで。



「なんやの兄貴。私、まだ気分よくないんやけど」
「つか俺は関係ないんちゃいますか」
「……光、なんでおるん?」
「部長に呼ばれたんや」
「二人、ええか。今日は植物園に行くで」
「「え〜?」」


有無を言わさず兄貴に乗せられて植物園へ行く。
どうせ毒草やろぅ…


「見ろ!これはなぁ…」


何やら呪文を唱えていたので私はなんだかんだで光を連れて逃げることに成功したわけや。




「はぁ。あの毒草マニアが」
「ええやん。あれでも気を遣って連れてきたんやろうし」
「何に気を遣ったん?」
「わからん?昨日、お前倒れたままやったやん」
「…う。」
「まぁ植物でも見て酸素でも分けて貰おうや」




私でも気付かなかったのに、なんか凄いわ光。
でもなんで光まで連れてきたんやろ?



「なんや色々あったなぁ。」
「光と再会して、先輩らとかに会って一年も経つんやな」
「…なぁ、お前、俺らに遠慮してへん?」
「……聞いたんだ」
「部長からな。俺らは別に何とも思ってへん。言いたい奴には言わせりゃいいんや」
「でも……幼馴染みだからズルいってさ。そうやな、あの子らにとっては私は邪魔なんや」
「他がどうとか、関係ないやろ?俺はお前と好きでおるわけや。堂々とし」
「うん。ありがとう…なんや気分ええわ」
「そりゃ良かった。お前があの調子ってのも俺は嫌やからな」
「また明日から元気で行くもん!」
「…ん、俺もリコのために頑張ったるかな」
「へへ、よろしゅう!」


その時はなんか私のために協力してくれる光にいつも甘えていた。
でも、彼の表情の裏側を私は何も知らなかった。


光の顔があまりにも悲しそうだったから。





私は気付かなかった。
気付けなかったんだ。







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