我の負は汝の勝




私、白石莉子の苦手なものは


『千歳千里』である。





「謙也ばかりズルいばい、俺ともデートせんね?」
「やかましい!私は謙也先輩のものなの!」


いつもベタベタ、私に付きまとう彼が私は苦手です。



「でも謙也は莉子ちゃんのことを好きとは言ってないし、俺にも可能性はあると思うんやけど?」
「これから言ってもらうんです!私のことは放っといてください!」
「ムキになって、むぞらしかね♪」
「きぃぃぃぃ!」



私だってこんな好かれたのは初めてだから戸惑っているんや。
だからといって折れるわけにはいかへん。


「…莉子ちゃん?」
「ひゃっ!?」



いきなり先輩が私に触れたので思わず身体が跳ねた。
卑怯やろ…今考えてことしてたから驚いてしもうた。



「な、なんや…」
「なんで俺にはちゃんと接してくれんとね?…好きな子から避けられたら辛いんたい」
「だ…だって先輩は真っ直ぐすぎるんや!…って」
「直接的は苦手なんね、でも莉子ちゃんの想いも同じと思う」
「一緒にしないでくださいよ…」



いつだってそう。

私を見る瞳はいつも澄んで真っ直ぐで、私はそれから反らすしかない。

私の謙也先輩を見る瞳も同じなんやろか?




「…なら、私にもまだ可能性あるってことですね!」
「ぶっ」



近くにあった千歳先輩の顎に見事に頭突きがクリティカルヒットしてしまった。


「私を先輩にやる気はサラサラありませんからね!」
「…まだ謙也のものになるとは決まっとらんばい」





まだ私達の戦いは終わらない。

千歳先輩の瞳に少しだけドキドキしたのは内緒だけど。






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