貴方に、渡せる勇気が欲しいです
「…」
「…」
また気まずい空気が流れていた。自覚してしまったが故に、二人になると恥ずかしいものがある。
「…部活、お疲れ様です」
「あ、あぁ」
「若くん、一人で来てくれたんですね」
「まぁな」
「…」
「…」
内心はとても嬉しかったことを、素直な子なら言えるだろうと思ったが、そういうことが言えずに、また沈黙してしまった。
「(今なら、渡せるかもしれません…渡せたら――………)」
「さすがに、2月は寒いな。要は寒くないか?」
「…えっと!あ、はい、今手が暖かいです…はっ!」
「そ、そうか……」
自分の一言が爆弾になり、沈黙をより深めそうだった。
熱がまた上がりそう。
「そうだ、若くんは…今日、どうでした?」
「俺は断固拒否した。…貰いたくなかったし(要のが欲しかったから)」
「あ、そうなんですか…(甘いものはダメなんですね…)」
やはりすれ違う。
『諦めない!苦手だろうとアタックだよ!お姉ちゃん!』
「…雫……私、頑張ります」
「…?」
「若くん!あの、これ!」
「これは………」
雫の助言のおかげでチョコを貰うことが出来た日吉。結果オーライ!
「チョコ、です」
「…っ」
「苦手…ですよね。ごめんなさい。でも渡したくて」
「いや!苦手じゃない…う、嬉しいぞ」
「本当ですか!?」
最高に眩しい笑顔を思わず倒れそうになる意識を持ちこたえ、向き直る。
「…要「それでですね」
折角の決意を遮られた日吉は端から見たらカッコ悪いだろう。
「私、決めました。…明日からは何も心配もしないで欲しいんです」
「それはどういう意味だ…」
「私、帰ります!」
「いや、俺が送る…っていない!?」
空回り気味の恋する乙女は走り去っていった。
彼女のいう意味とは一体なんなのだろうか。
幸せと疑問を残し、バレンタインは幕を閉じた。
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