こんなに近く、簡単なことを
俺は、何故気付かなかったのか。
こんなに近くに大切なものがあったんだ。
痛々しい姿の須藤を抱き抱えた時、手も小さく、肩が震えていた。
弱々しくも口から紡がれる言葉。
いつも傍にいて、近くから感じた温もり。こんなにも俺はコイツを必要とし、愛しく思っている。
それが全ての答え。
鳳に言われた『要をどう思っているの?』
答えは出た。
「王子は私が命を掛けてお守りします!」
「うわぁ…やるねー」
「あ、滝(ry 日吉、やっちまったな!」
「さすが次期に俺様の後を継ぐ男だ」
会場が一気にヒートアップ。歓喜に包まれた(何故
一幕が降り、次の準備をしたら事件発生。
「なんかドレスが破れました」
「「「えええええええ」」」
「どうすんだ!?あれ一着しかないぞ!」
「あの場面みたら力んじゃいました☆」
「小さいサイズしかないですよ!」
「しょうがない…ここは須藤君に一肌脱いでもらう!」
「わ、私ですか?」
「今は君だけが頼りよ!カツラに化粧するから早く!」
****
ざわざわ…
幕が上がり、全体が唖然とした。
先程の姫ではなく、とても美しい姫が居た。
従者だった日吉が王子に変わり、要が姫を勤めている。
「凄く…美しい!!」
「誰よあの女!それにしても可愛いわ…」
「あれは…要なのか?」
「可愛すぎるやろ…」
当の本人達は
「久し振りでなんだか恥ずかしいです…」
「頑張れ、あと少しで終わるぞ(俺は何を思ってるんだ…!人には見せたくない…)」
こうして閉幕を迎え、大歓声が上がり舞台は成功に終わった。
「日吉、そろそろ気付いたんじゃないの?」
「ニヤニヤして気持ち悪いぞ。アイツは俺の…」
「俺の?」
「守るべき妹だ」
「い、妹?」
誰が言ってやるものか。好きな奴、なんて。
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