決戦、演劇開幕いたします




ついに演劇本番を迎えた。
稽古の間に神山は何もしてこなかった。

「今日は頑張ろうな」
「…そうですね」
気安く肩に回された手を叩く。
油断したら食われるのだから。

ブー…
幕が開ける。


―……

「姫、どうぞ悲しみに心を奪われないでください。」
「ですが王子…っあの男がやってくるのです。私は恐ろしい…」
「私と、この従者が付いております」


静かに黄色い声と不満のような、笑い声が混ざる。
あんなデカイ姫は誰でも笑ったりしてしまうのだろう。

「王子、貴方が危なくなれば私は貴方の盾になりましょう」
「あぁ、だが決して死ぬな、良いな?」
「はっ」

熱い演技に会場は興奮に包まれ、そして時は来た。

「ははははっ!姫…迎えに来ましたぞ?」
「いやです!あぁ、王子お助けください!」
「待て!不貞な輩め…ここは通さん!」

要と向き合う神山。少し後ろに控える日吉。

「王子よ…お前はとてもいい目をしているな」
「(!?台本にない台詞!?)」
「その目が堪らなく私を興奮させる…」
「…その様な言葉に惑わされない!」

先手を入れたが、呆気なく受け止められた。

「…馬鹿がっ王子!ここは下がり私が!」
「(若くん…)しかし、私は成し遂げなければ…!」
「貴方が手を出すほどの相手ではない!」
「ふはは…っ王子、こちらに来るのだ。私は本当は姫に興味があるわけではない。」
「(ちょっと!台本と違う!で、でもこれも有り?)」

部長あっさり受け入れた。

「貴方が欲しいのです…貴女を手に入れるために、なんでもしますよ!」
「…!」

一瞬、あの時の恐怖が甦り、判断が着かなく足を外してしまいそうになった、のを日吉が受け止めてくれた。

「王子、ダメです。相手の手に堕ちては…そのために俺に頼ってください!」
「あ…っ」

そうか、私は頼れば良かったんだ…と要は気付いた。




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