*この痛みを越えるため




須藤…、アイツが危ない。俺にはわかる。
あの神山は…アイツに勝ることを。

「俺様の知っていることは、神山隆は狂気だと言うことだ」
「あの、神山が…?ねぇ日吉!」

――なんで気付かなかった?俺は、アイツの近くに居たというのに。
見てきたと言うのに――!

「おい日吉!」
「っ、」
「冷静になりやがれ。そんなんじゃいつまでも俺様を越えられないぜ?」
「跡部さん…」

落ち着け俺。今は、アイツを助けに行かないと。

「日吉、行こうよ!」
「言われなくても」

****

「…っはぁ…!」
「なんて可愛いんだ。須藤…」
「そんな、汚らわしい…!私に…っ触れるなぁ!!」
「なんだ、まだ抵抗するんだ?くくっまだ楽しませてくれるんだ…?」

こんな汚れた空間にはもう居たくない。そんな気持ちから、取り乱してしまった。

―私、どうなるの?―

ガタッ!

「!」
「須藤!いるか!?」
「…ぁ!」
「呼ぶなよ?その口を塞がれたくなければ」
「(いや…でも呼ばないと…!)」

ガチャリ。

「…あれ、簡単に開いた?可笑しいな内側からのはずが」
「俺達には跡部さんって人がいるんだよ。こんなの通用しない。…神山」
「あはは…マジかよ。すげぇな日吉」
「日吉!要が!」

視線の先には、痛々しい姿をした要が苦痛の表情をしていた。

「…わか…、若くん!長太郎君!」
「須藤!…神山、てめぇ」
「自分のモノを汚された気分か?日吉…」
「自分のしたことが分かってないみたいだな」
「…ゲームはまた後だ。まだ終了する気はない」
「この…っ!」
「ダメだ日吉!今は要を…」

惜しみながらも神山を逃がし、要の元へ駆け寄る。

「助けに、来てくれたんですね…」
「アイツに何されたんだ?」

日吉、鳳の登場に安心して涙が流れる。その雫を日吉は掬い、彼女に言葉をかける。

「…大丈夫です。このくらい…」
「お前は女なんだ。大丈夫なもんか…っ」
「そうですね、私も痛感しましたよ。自分が女であることが…こんなに非力だなんて」
「女は男に守られてればいいんだ…」
「…若くん?」

いきなり不安そうに、悲しそうに顔を伏せる日吉の顔に手を添える。

「(こんなにも失うことが怖いなんて…俺は)」




- 27 -


[*前] | [次#]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -